あなたには故郷があるだろうか?
故郷と聞いて想像するのは幼少期に遊んだ慣れ親しんだ場所。
大人になってその場所から離れるとなおさら
生まれ育った場所というのは懐かしくて温かい心境にさせてくれる。
そんな故郷に訪れてなぜか涙が止まらなくなってしまった話を少し。
新しい世界

僕の生まれ育った場所は兵庫県宝塚市の下町のほう。
最寄駅でいうと小林という駅がいちばん近かった。
当時はまだ近所づきあいが盛んな時代だったのでどっかの
知らないオッちゃんに怒られたりすることも当たり前だった。
近所にはたくさん子どもがいて
毎日その子たちと遊んでいたのをかすかに記憶してる。
やがて成長して5歳、6歳ぐらいになると、
僕はひとりの年上の友達とばかり遊ぶようになり
その友達がいろんな場所に連れて行ってくれた。
僕は新しい世界を知ることができた。

それはカブトムシがいるような森だったり、
魚やカエル、カメがいるような川だったり、
そんな大自然の中でいろんな生き物を捕まえる。
僕はそういう遊びに夢中になっていった。
いろんな思い出があるなかで、
いちばん強烈に残っている思い出が
そんな自然と戯れるような遊びだった。
小学校2年生で転校することになり、残念ながら
その場所から離れてしまうことになるのだけど
引っ越した先でもそういう遊びはずっとしていた。
さすがに小学校高学年ぐらいになるとそういう遊びを
することは減ってしまってスポーツに夢中になっていった。
やがて時は経ち、高校生になって心が最強に荒んでいった。
不思議な感覚を味わった

高校3年生の夏に僕は中華料理屋さんでバイトをしていた。
そこで事件に巻き込まれる。
ありもしないお皿盗難事件の犯人に仕立てられてしまい、
その場で店長にボコボコにされてしまった。
バイトもクビになり途方に暮れた僕は
真夜中に原付バイクで行く宛もない旅に出た。
そうしてたどり着いたのが
兵庫県宝塚市、僕が生まれ育った場所だった。
かれこれ10年ぶりぐらいに訪れたその場所はずいぶん小さく見えた。
当時住んでいた家も
「こんなに小さかったっけ?」
と思わず二度見してしまった。
道路もあのころはかなり広く見えていたのにかなり狭い。
それもそのはず。
あの頃の僕はまだ背が小さかった。
このときにはすでに
今と変わらないぐらいの身長にまで成長してしまっている。
僕はそのとき、昔住んでいた家の前で夜中にひとりでたたずんでいた。
はたからみれば完全にただの不審者である。笑
そこでいろんなことを思い出していると
声が出そうになるぐらい号泣して涙が止まらなかった。
しばらく泣きながらその場に座り込んでいたら、
警察の人がきて「何をしているのか?」と尋ねられてしまった。
僕は正直に
「昔住んでた家なんです。久しぶりに見たので少し感傷にひたってました。」
と答えたら
「そうか。気をつけて帰りなさい。」
、とだけ言ってすぐに立ち去ってくれた。
たぶん気を使ってくれたんだろう。
僕はこのとき初めて親に対して感謝の気持ちが生まれた。
でも荒んだ心はまだまだ直ることはなく、それはもうすこし先の話。
そんな故郷を離れて何年間か違う場所で生活して
改めてその場所を訪れると不思議な感情が生まれる。
そんな想いを込めて描いた絵

タイトルは『新しき世界』。
小学校の低学年のときに
ドヴォルザークの「新世界より」という曲が
下校の時間になると学校の放送で流れていて、
その曲を聴くと妙に懐かしい気分になったのを覚えていた。
あとから調べたら「新世界より」という曲は
新しい環境に行って故郷を思い出して作った曲だということがわかった。
そんなエピソードになぞらえて『新しき世界』というタイトルをつけた。
この足の主はまだ小さい子どもなのに故郷もクソもねぇだろう
と言われればそれまでなんだけど、大人の足よりも
子どもの足のほうが雰囲気が出ると思ったからあえて子どもの足にした。
この絵は子どもの決意みたいなものを
感じるというお褒めの言葉をいただける。
この絵から勇気をもらえる人も多いみたいだ。
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