どうも。水墨画家のDと申します。
水墨画の道具の中級編です。
水墨画の道具はとてもシンプルでお手ごろ価格でそろえようと思えばいくらでもリーズナブルな道具があります。
詳しくはこちらに書いてあるので読んでください。
ここに書いてあるのはどれもこれも千円もかからないぐらい超お手ごろな道具ばかりです。
これには理由があって、初心者は道具の良し悪しがわからないからです。
まずは墨をにじませたりぼかしたりして濃淡を表現する、水墨画ならではの楽しさを知ることのほうがはるかに優先事項です。
いきなり値がはるようなものを揃えなくても水墨画はじゅうぶん楽しんで描くことができます。
ある程度描けるようになってくると心に余裕が出てきて道具もこんなのも使ってみたいな、という欲望が出てきます。
そんな中級者向けの道具を紹介したいと思います。
水墨画の道具・紙
水彩紙
水墨画に紙は必須アイテムですが、描きたいものによって紙も全然変わってきます。
たとえばこんな感じ↑の表現をしたいのであれば和紙では上手くいきません。
理由は水をたくさん使うので薄い和紙ではすぐにボロボロになってしまうからです。
水彩紙っていう、目が細かくて分厚いやつがベストです。中でもアルシュというフランス製の高級水彩紙が抜群にいい仕事をしてくれます。
「高級」なんてついてしまっているのでめちゃくちゃいい品物です。
それなりにお値段もしてしまいますがその価値はじゅうぶんすぎるぐらいあります。
画仙紙
画仙紙はにじみ・かすれを使う書画表現を満たすために作られた紙です。
いわば水墨画用に作られた紙ですね。
画仙紙っていう名前は、もともと中国の宣州っていう場所で作られた、というところからきているようです。
宣で作られた紙で「宣紙」が変化していって仙という漢字を使うようになったと。
江戸時代は中国から輸入したものを使っていましたが、第二次世界大戦後は各地でこの紙が作られるようになったそうな。
画仙紙にも種類がたくさんあって、厚みとか紙質によってにじみ・かすれの表現も全然変わってくるので完全にお好みです。中国製の画仙紙はとてもよくにじみます。
ちなみに中国で作られた画仙紙を「本画仙」日本で作られた画仙紙を「和画仙」とも呼んでいます。
麻紙(まし)
麻を原料にして作られた紙です。
画仙紙と比べるとにじみが少なくて中にはにじまない紙もあります。
少々分厚めに作られているのも特徴で墨を多少塗り重ねても崩れにくいです。
少々高価です。
機械漉きか手漉きか
和紙には機械漉きのものと手漉かのものがあります。
最近は職人、原料、需要が減っていることから手漉きは貴重なものになってきています。
機械漉きは大量生産されるので材料も木材パルプとかになってます。
なので純正の和紙自体がかなり貴重な存在になりつつあります。
水墨画の道具・筆
筆には数えきれないほどの種類があるので一部抜粋して紹介します。
附立筆(つけたてふで)
付立筆、没骨筆(もっこつふで)とも呼ばれます。
没骨法っていう輪郭線を描かないで面で表現していく技法があります。
この没骨筆はそのための筆です。
穂先を長くそろえることができて、筆の膨らみを活かして濃淡を最大限表現することができます。
線描筆(せんびょうふで)
読んで字のごとく、線を描くための筆です。笑
線描筆は大きく分けて3種類あります。
則妙筆
羊の毛と猫の毛を使って作られた筆です。
墨や水の含み、おりが良くて柔らかい線が描けます。
削用筆
羊の毛とイタチの毛で作られた筆です。
穂先がとがったような形になっていて、腰が強くて硬い線も柔らかい線も自由自在です。
僕はこれで水を含ませて墨をボカすのに使っています。
面相筆
面相筆は名前とは裏腹にめちゃくちゃ細い穂先が特徴です。
繊細な線を描くときに使います。
動物の毛なんかを表現するときに多用します。
平筆
平筆は字のごとく平べったい筆です。
金具で毛を束ねていて、ちょっと水彩絵具っぽい感じです。
面を塗るときに使います。
同じような筆には「刷毛」があります。
水張りをするとき、空とか海とかを表現するときに使ったりします。
ほかにも「連筆」という何本かの筆を並列につなげた筆もあります。
刷毛と同じような使いかたをするのですが連筆のほうが表現が柔らかいのが特徴です。
水墨画の道具・墨
墨は大きく分けて2種類あります。
「油煙墨」と「松煙墨」です。
基本的には原料を燃やしてできた煤を膠という接着剤で練り固めたものを固形墨といいます。
これを僕らは水と合わせてシコシコ磨っているわけですね。
油煙墨
油煙墨は菜種油などの植物油を燃やした煤で作ります。若干茶色がかった色が特徴です。粒子が細かくて艶やかで光沢があります。
原料のよって色みも変わってきて、菜種油は茶色っぽく、胡麻油は赤っぽく、椿油は紫っぽくなります。
松煙墨
松の木を燃やしてできた煤で作られています。歴史の深い製造方法の墨です。粒子が粗くて不均衡で光沢が少なくて深みのある色になります。
松煙墨は長い年月がたつと青みがかってきます。なので青墨と呼ばれたりもします。
古墨と新墨
墨には作られてから何年たってるかで古墨と呼ばれたり新墨と呼ばれたりします。
そこまで厳しく分かれているわけでもないので基準はかなりあいまいで、専門家でもその判別は難しいといわれています。
保存状態にもよるので一概にどうこう言えるものでもありませんが、だいたいこんな感じで分かれてるよーぐらいでいいと思います。
作られてから5年以内のものは新墨で、それ以降は古墨です。古墨のほうが一般的には良いとしています。
要するに墨の中に水分が残っているかどうかの違いなんです。
乾燥した場所で保管すればそれだけ水分が飛びやすいので墨が良い状態になりやすいですね。
保管状態さえ良ければ何百年は保存できるそうです。#ひぇーーー
水墨画の道具・硯
僕は↑で「硯こそ違いがわからんからなんでもいい」とか言っちゃっていますが、それも本音は本音です。
でもやっぱりやってるうちにこの硯あんまりいいなぁとかわかるようになってきちゃうんですね。
墨を磨ってるときの滑らかさ加減とかがやっぱり全然違います。
というわけで、硯の選びかたのポイントは以下の通り。
・重量感:基本的には天然の石から作られることが多いのでズッシリ重みが感じられるものが良いです。
・鋒鋩:墨堂(墨をするところ)の質感。細かい凸凹があって赤ちゃんの肌のような手触りがグッド。
・紋様:中国製の硯には材料の石の模様がそのまま残ったものがあります。この模様は良い墨を磨るのを妨げてしまうこともあります。この模様は実用的なものじゃなくて観賞用のものがほとんどです。
水墨画の道具・ほか
エトセトラの道具もかなりテキトーなものが多かったですが、本格的なものを紹介したいと思います。
筆洗
本格的なものはこれです。
陶器製で趣があって水墨画っぽくて良きです。汚れ具合がわかるので白が良いかと思います。
絵皿
本格的なものはこれです。
陶器製で趣があって水墨画っぽくて良きです。これも汚れ具合がわかるので白が良いかと思います。
筆おき
龍のヤツとかカッコいいです。
文鎮
和紙を押さえるときに使います。
水彩紙だと水張りするので使いません。
水差し
こんなものもあるんですね。
中国っぽくて良趣があって良きです。
まとめ
水墨画の道具・中級編でした。
これぐらいになると見た目的にもかっこよくなるので誰に見られても平気ですね。むしろ見せたくなるぐらい。
んで道具の歴史とか知って職人さんの想いとかも知っていくとさらに道具にこだわりたくなります。
それはまた後ほど書きたいと思います。
それではさようなら~。