こんにちは。水墨画家のDと申します。
今回は「デッサンのコツ」というテーマで能書きをたれていこうと思います。
「デッサンのコツ」っていうとどうしても「描く」ことのほうに意識がいってしまいがちですが、実は「描く」ことよりも「観る」ことのほうが圧倒的に大切だったりします。
今あえて「見る」ではなく「観る」という字を使ったのにはちゃんとワケがありまして、「見る」よりも「観る」のほうがなめまわすようにじっくりみるという意味だからです。
割合でいうと描く:観るが3:7ぐらいの割合で考えるとちょうどいいあんばいです。
そんなに?と思いますよね。僕もビックリしています。その理由を今から解説したいと思います。
デッサンの目的
デッサンはフランス語で素描とか下絵、ときには「絵」そのものを表したりします。
欧米かぶれ(?)のわが国ニッポンでも同じようにすごく幅広い意味を持っています。
ただの白黒の鉛筆画をデッサンって呼んだりするし、目の前の実物を観て写実的に描くこともデッサン。絵の基本、基礎もデッサンです。
つまり、特にこれといった定義はなくて、これ以上デッサンの意味とかを深く考えてもしかたないので、もうエンピツでシャッシャッって絵を描くことが「デッサン」でいいと思います。
絵を構成する要素がいくつかあって、まずコンセプト。構図。物の形。色彩。質感。量感。光。陰影。これが全部そろってたら絵は絵として成立します。
デッサンをする目的はこやつらを表現するための力を磨いて、総合的にレベルアップさせることです。
もはやデッサンは「絵」そのものといっても過言ではありません。#結局フランス語と同じ意味
デッサンという練習は絵だけにとどまらず、彫刻、建築、すべてのモノづくりの基本って言われてるのはこういうところに要因があるわけですね。
詳しくはこちらの記事をごらんください。
描くより観るが大切な理由
さて。
そんな超ハイスペックなデッサンですが、意外と皆さん「描く」ことばかりに意識がいきがちです。
デッサンは描く練習よりもむしろ観る練習です。
観ると言ってもただモチーフの外から見えてる部分だけを観るんじゃなくて、モチーフの中身も観るんです。たとえばモチーフは今何を考えてるんだろう、とか。性格とか。どんなふうに生きてきたんだろう、とか。
いろんなところを細かいところまで観察して、モチーフのいろんな情報を取り入れることで、描く絵に説得力が出てきます。
たとえば人物画を描くとき、モデルの性格とか好みとかを知っていると、「今の顔はすましてるな」…みたいなこともわかったりします。どんな人生送ってきたかを聞いて情報収集することで、あの傷はそういう意味があるのか、、とかがわかったりするので、そのぶんだけ絵の表情が豊かになります。
描くよりも観るが大切な理由はまさにココです。
観るところは無限に近いぐらいあります。
言い出せばキリがないぐらい。
いろんな情報を集めようとすると観察力と洞察力が鍛えられます。
そんでもって細かいところまで観察したことでこの部分はこうなってるからこう描けばいい、っていう自信が生まれるので、表現力が増します。
あと、人は悲しいぐらい忘れていく生き物なので、いちいちみてないと時間が長くなればなるほど頭の中のイメージが薄れていきます。
なので少し描いては観る、少し描いては観る、を繰り返してると自然と描く:観るが3:7ぐらいになってる感じです。
どこを観るの?
デッサンでいちばん観るべきところは物の形です。
人は目に入ったものが何かを判別するとき、まずそれがどんな形をしてるのかで判断します。細かいところはけっこう後回しにしてるんです。
なので描こうとしてるモチーフがどんな形をしてるのかがいちばん大事です。
それを逆手にとったのが「間違いさがし」です。
あれは大まかな形はほぼ一緒で、細かいところで形を少し変えたり、数を増やしたり減らしたりしてその違うところを当てる遊びです。
◾️モチーフの特徴をつかむ
わかりやすいのがシルエットです。あれはものの特徴を的確にとらえていて、真っ黒なクセにそれが何を表してるかが一瞬でわかるから面白いです。
これなんかは誰がどうみても鳥ですよね。
これだとちょっと何の種類かまではわからないですが、これなんかだと一瞬でニワトリだとわかります。
これはニワトリの最大の特徴であるトサカがあるからです。
ものにはそれぞれの特徴があるので観るべきところはそこです。
たとえばネコだったら、特徴は耳が三角でピンッと立ってる感じです。わりと長めのしっぽがあって自在に動かすことができるのでS字に曲がってたりします。#このしっぽが小さいころうらやましくてしかたなかった
ここまではほかの動物でもありそうですがネコ最大の特徴はなんといっても丸くなった背中です。
「猫背」という言葉があるぐらい、ネコの背中はまん丸くなっています。
そういう外見の特徴をとらえて輪郭を描くとこんな感じになります。
これだけでもじゅうぶん「あ、ネコだ」ってなると思います。(なってる???)
で、面白いことにここから細かいところを描きこんでいくと徐々にネコが仕上がっていくのですが、それをめちゃくちゃテキトーに描いたとしても全然ネコにみえてしまうのが面白いところです。
こんな感じで。
すっとぼけーのふざけた顔はしていますが、ネコに見えるでしょ?笑
ヒトだったらたとえばお相撲さん。
パッと思い浮かんだわかりやすいのがお相撲さんでした。
チョンマゲがあって小太りなので特徴だらけで超わかりやすいです。
これもネコと同じように形さえしっかりとらえれたらあとはテキトーでもふざけててもちゃんとお相撲さんなんです。
写真でもおっけー?
デッサンは実物を観て描くイメージが強いかと思います。
たしかに実際に目の前にあるものを観察することでしかわからないことがたくさんあります。
空気感とか、雰囲気とか温度、湿度、匂い、五感のすべてを刺激されるので、これほど絵描きにとって最高な環境ってないと思います。
とはいえ、じゃあ写真じゃダメなのか?というとそうでもありません。
たとえば馬を描きたいと思ってもなかなか身近にいるような動物じゃないので動物園とか牧場とかに行かないと実物は描けません。
じゃあ身近にいるネコとかイヌなら描けるじゃん、ってなりますが、探すと意外と見つからなかったりします。笑
風景とかでもそう。
「富士山描きたいなぁ」ってなっても、近くに住んでるとかだったらいいですが、たとえば大阪に生息してたらどう頑張っても片道で2、3時間はかかります。
往復ってなると6時間。ありえないぐらい時間がもったいない。
そんなわけで写真を観て描いたほうが圧倒的にコスパがいいのでドンドン写真でデッサンしてください。
ネット上にはいくらでも綺麗な解像度の写真が転がってるし、動きが観たかったらYouTubeがあります。
さすがに匂いとかまでは体感できないですが逆にそれを逆手にとって、イメージを膨らますっていうトレーニングにすることもできます。
写真から読み取れるいろんな情報から、自分がそこにいるかのようなイメージを創るんです。
季節、温度、湿度、天候、匂い、空気感。想像力を全開にしてあたかも五感で感じ取ってるかのようなイメージを作れるようになると表現力が増します。
こんな写真だったら青空が広がってはいるけど木の葉っぱが黄色になってるのと雪らしきものが積もってるのが見えるから多分季節は冬ですね。
冬なのと水辺なのとですっげえ寒そう。
で、匂いとか湿度とか情報がなくてわかりにくいようなところとかは自分の近い経験をイメージしてなんとなくこんな感じかなぁ?みたいなのでいいと思います。
なにもバッチリそのとおりにする必要はまったくないので。
むしろ自分の経験とかが混じるとそれがオリジナリティにもつながって一石二鳥になります。
写真でデッサンするときのちょっとした裏技
デッサンは基本的には白黒です。
モノトーンです。
なのでモチーフをスマホで写真に撮ってそれを編集して
グレースケールにすれば光と陰の加減が分かりやすくなります。
これでだいぶ楽に描くことができます。笑
まとめ
以上、「デッサンのコツ」というテーマでお送りしてまいりました。
意外と見落としがちなことなので意識してやってみてください。正直これ意識するだけでも上達速度がだいぶ上がると思います。
もし効果あったら大阪のほうに向かって「ありがとう!」と叫んでください。
喜びます。
それでは失礼いたします~
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