絵の練習に欠かせないもの。
それはデッサンです。
デッサンというとどうしても地味な印象があるため、
嫌う人は多いです。
デッサンなんか役に立たないという人も中にはいらっしゃいます。
が。
アナログだろうとデジタルだろうと
絵を描くことにおいてはデッサンが必須アイテムです。
野球で言えばキャッチボール、素振り。
バスケットボールで言えばドリブル。
絵が上手くなるためにはデッサンがいちばん効率的です。
デッサンはただ描く技術を上げるためのものではありません。
いろいろな技術を習得できます。
そんなデッサンを徹底的に紐解いていきたいと思います。
デッサンとは
そもそもデッサンとはなんなのでしょうか。
デッサンはフランス語で「dessin」です。
日本語では素描、英語では「drawing」といいます。
物体の形や明暗などを平面に描画する美術の制作技法
Wikipedia参照
とあります。
立体的に見えるものをいかに
平面で表現するかがデッサンのカギとなります。
基本的に人間の目で視認できるのは立体的なようで平面です。
そこが本質です。
デッサンをきちんと練習すればその本質の部分がしっかり
理解できて作品を作っていくうえで効率よく進めていけるハズです。
デッサンが教えてくれるもの①コンセプト

まずはいちばんの肝の部分ですね。
どんなコンセプトで絵を描くのか。
こんなこともデッサンは教えてくれます。
僕は馬が好きなので馬を例に挙げて解説していきます。
ひとくちに馬といってもいろんな馬がいます。
競走馬、乗馬、動物園の馬、野生の馬、
それらの中から自分が描きたいもの、
または描けば素晴らしい作品になる、
作品を観た人に自分の想いを伝えられる、と思ったものを選択します。
僕は競走馬が好きなので競走馬にします。
競走馬は人間が作ったものです。
より速く走れる馬を作るために血統を見て配合したり、
調教と呼ばれる訓練をします。
そこにはいろんな人の想いが詰まっています。
人が共感できる要素がたくさん詰まっています。
そこからどんなコンセプトが導き出されるのかを考えます。
仮に「栄光」とします。
大きなレースを勝てばその馬にとっては「栄光」です。
栄光の裏には挫折があります。
挫折からはいあがって勝ち取った栄光は感動を生みます。
、ということでコンセプトは「栄光」にします。
デッサンが教えてくれるもの②構図

ふたつめは「構図」です。
どんな構図で絵を描けばコンセプトである「栄光」が
より見る人に伝わるか、ということを考えます。
ここで大事なのは目線です。
人間にとっての栄光なのか、馬にとっての栄光なのか、
で構図はずいぶん変わってきます。
人間にとっての栄光はわかりやすいですね。
こんな構図です。

引用:https://www.sponichi.co.jp
このような構図は人間にとってはまさに栄光の瞬間です。
大きいレースを勝ったその直後の口取り式。
この瞬間のために馬主さん、並びに関係者の皆さんは頑張っています。
では、馬にとっての栄光とはなんでしょう?
馬には大きいレースなのかどうかすらも理解しているかは曖昧です。
頭のいい馬なら理解しているかもしれませんが、
必ずしもそうであるとはいえません。
ですが、栄光があるとしたらおそらく
"他の馬よりも速く走る"ことでしょう。
馬は他の馬よりも速く走りたいという性質をもっています。
、というわけで、構図としてはこんな感じになります。

引用:https://www.hochi.co.jp
馬にゴールというものが理解できているかどうかは
わかりませんが、馬は走ることが大好きです。
なのでこんな構図がいちばんそれを表しているのではないでしょうか。
実際のゴールの瞬間を絵にするのはなかなか
困難なので写真をもとに構図を決めていきます。
全体的にするか寄せたものにするかは好みもありますが、
今回は寄せたものでいってみます。

臨場感が伝わりやすいので。
構図が決まったので次にいきます。
デッサンが教えてくれるもの③形をとらえる

コンセプトと構図が決まってやっと絵を描いていく段階に入ります。
今回は馬目線でいきたいと思います。
ゴールの瞬間です。
これをデッサンする場合、何から始めればいいでしょう?
まずは、大きく画面のバランスをとります。
エンピツで軽く線を引きます。
これをアタリをとるといいます。
アタリをとってから細かい部分を詰めていきます。

こうすれば全体のバランスを崩すことなく、
効率的に描いていくことができます。
これである程度の形をとらえることができます。
デッサンが教えてくれるもの④光と陰

形が整ったら次はどの部分に光が当たって、
どのように陰ができるのかを見ていきます。
光と陰はデッサンで最も重要な部分です。
なぜかというとデッサンは基本的にはモノトーンだからです。
1色しか使える色がありません。
なので形と光と陰でしかそのモチーフを表現できないのです。
色をつけるにしろ、ないにしろ、どの部分に光がどれだけ当たって
それがどんな陰を作っているのかを見ることが大事なことです。
デッサンは描くことも大事ですが、それと同じくらいに
みること、観察することが大事な要素になります。
デッサンが教えてくれるもの⑤量感
光と陰を描くことができたら次は量感です。
量感とはそのモチーフの
大きさ、重み、厚みといったボリュームのことです。
これは先ほどの光と陰をうまく
表現できれば量感も一緒についてきます。
大事なことは陰が濃いところは濃く、薄いところは薄く、
といったようにコントラストをはっきりさせることです。
2つの画像を見比べればよくわかります。


全体的に薄いほうはあまり馬の厚みを感じられません。
ですが濃いところと薄いところをはっきりさせることで
馬に厚みが出ているのがわかりますね。
量感は観る人を画面に引き込むための大事な要素のひとつです。
陰を上手く表現できると奥行き感もでてくるようになります。
デッサンが教えてくれるもの⑥質感

次に質感です。
馬の肌を近くで見たことがあるということはあまりないと思います。
僕もあまりありません。
馬が好きだと言っておきながら。。。泣
馬の体には毛が生えています。
これが質感です。
たとえば石を描くならゴツゴツしてる感じ。
リンゴなら触るとキュッとなりそうなツルツルした感じ。
こんな感じが質感です。これを表現していきます。
馬の毛は他の動物に比べるとそこまで毛が生えている感じはありません。
なので毛を意識することはあまりありません。
馬に限っては。
デッサンが教えてくれるもの⑦総合的な技術
デッサンは本気でやればこれだけのことを教えてくれます。
コンセプトを考えることで自分が何を描きたいのかを明確にできます。
コンセプトに沿ってどんな構図でいけば
いちばんコンセプトに近くなるのかを明確にできます。
構図が決まればあとは描く技術を練習できます。
陰のつけかたを練習すれば自ずと光の加減も練習できます。
光と陰を練習することで質感や量感も習得できます。
デッサンひとつでこれだけの技術を同時に習得できるのです。
いわば一石二鳥どころか一石七鳥ぐらいの価値があります。
まとめ
デッサンにはいろんな技術を練習できる要素があります。
でもそれは自分が絵が上達するのはもちろんのことですが、
同時に絵を観てくれる人の立場も考える訓練にもなりえます。
どんなふうに絵を描けば自分が伝えたいことを表現できるのかを
考えることで客観的な目線を養うことができます。
それは芸術の根本的なところです。
デッサンは絵だけではなくすべてのものづくりの基本です。
紙とエンピツがあればいつでもどこでもお手軽にできます。
やればやるだけ上達していきます。
ぜひやり込んでみてください。
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