【水墨画の魅力】白黒だからこそ表現できる幽玄な世界

 

今回は「水墨画の魅力」というお話をお届けします。

白と黒だけで表現する幽玄な水墨画の魅力をとことん語る場所です。

どうぞよろしくお付き合いください。

ちなみに「幽玄(ゆうげん)」という言葉は、

奥深くてはかりしれないこと。奥が深く味わいが尽きないこと。

っていう意味です。

まさに水墨画にピッタリのステキな言葉だと思ったのでどこからともなく拝借いたしました。

Dの水墨画作品【想いは調べにのせて】

 

【水墨画の魅力】白黒だからこその抽象的な世界観

 

Dの水墨画作品【遠い約束】

まず。

水墨画の最大の魅力はなんといっても墨だけであの世界観を表現しているところでしょう。

色が黒しかないのです。白は紙の色です。

白黒の世界です。

モノクロとも言います。モノクロームの略です。

モノクロは「単色」という意味だそうです。

なので黒以外でも単色ならモノクロです。

モノクロってだけでなんかカッコイイというか、なんとなく「アーティスティック」とか「ノスタルジック」みたいなすごく好印象な感じを受けるのは、普段色がある世界を見慣れていて、そこには「非現実感」があるからです。

Dの水墨画作品【孤高】

色が持つ「力」は絶大で、目に映るものはだいたい色を持っていて、それを僕らは感じ取ることができます。そしてその「色」からあらゆる情報を得ることができます。

油絵とか水彩画みたいな色のある絵画は現実を忠実に再現することができるので、観る人に「具体的」な情報を与えることができます。

その具体的な、いろんな情報を駆使して、観る人に感動を与えているのです。

具体的ということは限りなく現実に近い表現になります。テレビとか写真が白黒からカラーに進化したのは、「具体的な情報を視聴者に伝える」っていう目的があったからです。

今や、ニュースが白黒だったら真相は視聴者に伝わりにくいです。これは色があるのが「当たり前」になったからです。

色がないと、現実じゃないような、すごく抽象的な印象を受けてしまうのです。

ポスターとか広告とかにモノクロ写真が使われるのはそういう「非現実的」な印象を与えて目に留まりやすくするためです。

 

テレビでも、モノクロの時代がありましたが、それも廃れることなく、今でもモノクロの映像が使われる場面はたくさんあって、それはやっぱり「回想シーン」とか、そういう「非現実的」な場面が多いです。

「色」という情報をあえて遮断することで現実世界から切り離されたような感覚になる。

これが白黒の世界の魅力のひとつです。

 

【水墨画の魅力】鑑賞側を表現側に引きずり込む

 

Dの水墨画作品【おうちへかえろう】

水墨画の魅力は、鑑賞する人の頭の中で足りない部分を補うというところにもあります。

色という情報がないぶん、観る人の頭の中でブワーッと想像が広がって、人それぞれ勝手に色がついていくのです。

もしこれが具体的に色をビシッと緻密に決め込まれてたとしたら、想像が広がる余地がありません。

 

そういう意味では、色がある絵画は表現者から鑑賞側に魅せるもの。

白黒の水墨画は鑑賞側を表現者の方に「引きずり込む絵画」と言えそうです。

 

同じようなことが昔のロールプレイングゲームで起こっていました。

「ファイナルファンタジー」とか「ドラゴンクエスト」とかあのへんのお話です。

昔のゲームは今とは比べものにならないほど、容量が小さかったので、音楽は三和音とか四和音とかで、映像もカクカクしてて、すごく抽象的な作りだったのです。

ただ、それでも素晴らしい工夫がたくさん仕掛けられていたので、何も違和感を感じることなく楽しめていたのですが。

でもそれはたぶん、容量が少なくて抽象的だったひとつひとつの場面の足りない部分を、緻密に練り込まれたストーリー構成、キャラクター設定、セリフ回しとかで、僕の頭の中で補って想像をブワーっと広げていたのです。

あたかもそのゲームの中にいるかのような錯覚が頭の中で生まれて、完全にその世界観に引きずり込まれていました。

鑑賞側が表現者に引きずり込まれてるいい例で、水墨画と完全に一致しています。

水墨画はたしかに観た人が頭の中で勝手に色を付けてくれています。

たとえばこちらの水墨画。

Dの水墨画作品【新しき世界】

これを観た人がたずねてきました。

「これは夕日ですか?朝日ですか?」と。

 

僕の中では「夕日」一択だったのですが、「なるほど…そんな解釈もアリだな…」と、すごく感動したのを覚えています。

観る人の頭の中で想像するための余白ができて、その余白を埋めることが共同作業になる。そんなところも水墨画の魅力のひとつです。

 

【水墨画の魅力】形と構図の極み

 

Dの水墨画作品【儚いモノ】

水墨画は色がない白黒の絵画です。

色がないので、それ以外のことを最大限活用して魅力的な絵画に仕上げないといけません。

そのひとつに「構図」があります。

どんな画面構成にすれば頭の中で思い描いてるイメージが伝わりやすいだろうか?

と。

たとえば夕焼けの空の絵を描くってなった場合。

色が使えるのであれば。

極端な話、こんな↓感じの絵でもなんとなく空っぽいかなー、と認識することはできます。

これで感動するかどうかはとりあえずおいといて。

それが色の持つ「力」です。

これの色をなくしてみたらこうなります。

これだけではもはや何がなんだかわかりません。

ただのグラデーション画像です。

じゃあこれをどうやったら「夕焼けの空」と認識してもらえるようになるだろうか?

何か他のモチーフを登場させるのか。

そして画面構成をどうすれば夕焼けの空になるか?

っていうことをアレコレ考えるのが白黒の絵画の面白いところです。

とゆーわけで。

ビルと夕日と雲を登場させてみると夕焼けの空っぽくなったのではないでしょうか。

もうひとつ。

こんな絵があったら。

おそらく「血」だと思ったのではないでしょうか。

これも色が持つ力です。

色がなくなったらこんな感じになります。

これだけだと何かの液体であることまでは認識できますが、血までたどり着くことはないと思います。

これを血だと認識してもらうには。

こんなふうにすると、「血」っぽくみえてくるのではないでしょうか。

こんな感じで、他のモチーフを登場させることで、はじめてそれが何なのかを認識することができます。

でもこれだけだと「それが何か」を認識することはできても、作品として感動してもらうところまで到達するにはちょっと難しいところです。

まぁそもそも、夕焼けの空ならまだしも、血の絵で果たして感動できるのかどうなのかってところなのですが。

 

こんなふうに「画面のどこに何を配置すれば感動してもらえるか」っていうのを『構図力』なんて言ったりします。

水墨画みたいに色がない白黒の絵画は、この「構図力」が思いっきり問われます。

かといって、アレやコレやとたくさん登場させると、画面がゴチャゴチャしてしまって何がメインなんだかわからなくなったりします。

なので、できるだけ少ない情報で、いかに観てもらう人に感動を届けることができるか、っていう、すごく難解なことをしようとしております。

水墨画を描く人にとっては、そんなことを考えるのも醍醐味のひとつです。

水墨画を鑑賞する時もそんなことを考えながら鑑賞すると、また違った面白さを味わえるのではないでしょうか。

それは、ちょうど17文字という、少ない文字数の中に情緒あふれる世界観を表現した「俳句」と通ずるところがあります。

日本ならではの奥ゆかしさがそこにはあります。

 

【水墨画の魅力】歴史と伝統

 

Dの水墨画作品【飛翔】

 

水墨画の魅力はその歴史の深さにもあります。

水墨画が誕生したのは、約1000年前の中国。

墨で絵を描くことに至ってはおよそ3000年前までさかのぼります。

墨絵が日本に伝わったのは平安時代のことで、水墨画が日本に伝わったのは、鎌倉時代のことです。

1000年以上もの間、我が国では墨で絵を描くことに親しまれております。

 

室町時代に「雪舟」という人物が登場すると、そこから一気に火がついて、皆さんこぞって水墨画を描くようになり、偉いお殿様が水墨画を求めるようになりました。

さらにそこから「狩野一族」という画家集団がおよそ400年もの間、日本の画壇を席捲して歴史に名を刻むことになります。

その間、我が国ニッポンは水墨画大国でした。

あちらこちらに水墨画があって、人々を魅了してきました。

 

そのおかげで現在も水墨画は歴史と伝統のある奥ゆかしい芸術として日本だけじゃなく、世界中のいろんな人に影響を与え続けています。

 

そんなことも水墨画の魅力のひとつです。

 

ここからは超個人的な意見を述べたいと思います。

 

狩野一族は幕府の御用絵師として活動していました。要は幕府の人たちから報酬をもらって、幕府の人たちのために個性もクソもない絵を400年も描き続けてたっていうお話です。

水墨画の狩野派って何?400年という歴史を作り上げた裏側

 

現在の日本の水墨画のイメージはこの狩野一族によるものが大きいんじゃないかと思います。

幕末で江戸幕府が倒れると同時に狩野一族もその役目を終えました。

さらに明治維新で西洋の文化がたくさん入ってきて、水墨画は片隅に追いやられて、マイナーな芸術になってしまいました。

狩野一族がお手本どおりの絵画ばかりじゃなく、もっと自由に絵を描いていたら、幕府が倒れて西洋の芸術が入ってきても抗えたんじゃないかと思っています。

 

個人的な意見としては、そんな世界線を見てみたかったな、という想いでいっぱいです。

かなり根っこが深くて、決して水墨画に限ったことだけじゃなく、日本の文化そのものの問題だとは思いますが。

生き残るためにはそうするしかなかったのもあるのかなとか思うと、狩野一族も犠牲者であることは間違いなくて、なんだかなぁと。。。

 

近年やっとこさそういう日本の悪しき習慣が払拭されてきて、水墨画がマイナーな芸術からひとつのアートとして認知されてきています。

 

まだまだ認知は低いですが、これからもっと水墨画が世界に広がっていくために力になれるように頑張らないとなぁと思う次第であります。

 

まとめ

 

Dの水墨画作品【戯れ】

少しネガティブなことも言いましたが、それは水墨画がまだまだ底知れない可能性があって、すごく魅力的な芸術だからこそ、日本が誇る芸術になり得るからこそそんな想いも抱いてしまうのです。

 

とはいえ。

過去を変えるなんてことできないし、今さらそんなことを言っても何も始まらないことは百も承知です。

大事なことは今の自分に何ができるか、で、目の前のひとりひとりの人が絶句するような水墨画を描いて、それをコツコツ地道に続けていけば自ずと道は見えてくるんじゃないかなと思います。

 

とゆーわけで。

今日もコツコツ水墨画を描いてきます。

長々とありがとうございました。

 

それではまた〜。

 

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Dの水墨画作品集

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