おはよーございます。
水墨画家のDと申します。
今回は水墨画で雲を描く時の方法や注意点を解説します。
こんな感じの雲の水墨画を描いていきます。
ごらんのように雲は「空」を表現する上でひじょーーーに重要なアイテムです。
なぜなら水墨画は白と黒しかないから。
もしもカラーの絵だったら、空を表現するのにいちばん分かりやすいのは青い色で塗りたくることです。
おそらくほとんどの人がこの画像を「空かな…?」と思うことでしょう。
空だという確信はないにしても、頭の中に浮かんでくる上位に空があるはず。
それぐらい「空=青」っていう認識があると思うんです。
ところが。
水墨画では色が使えないので先ほどの絵のように雲を登場させないとそれが空だという認識ができないのです。
仮にこれ雲がなかったらただのグレーで塗りつぶしただけの絵になってしまいます。
でもこのグレーの背景に雲がひとつポンっと浮かんでたらどうでしょう?
これだけで「あっ、空だ」となったのではないでしょうか?
雲を描く重要性がお分かりいただけたでしょうか。
ただ。
雲ってめちゃくちゃ難しいので、かなり練習が必要です。
でも難しいぶん、描けた時の喜びは計り知れません。
こんな感じで、いろんな雲が描けるようになれば、表現の幅が圧倒的に広がります。
こんな絵を自分の手で描けたら…と想像してみてください。楽しいしかないですねっ。
そして副産物として、雲を描けるようになると、今まで難しいと思ってたようなものでも簡単に描けるようになります。
雲がすこぶる難しいので、基本的な画力が底上げされる感じです。
それでは雲の描き方を解説していきます。
今回は他のものは描かずに、とりあえず雲と空だけを描くと仮定して話を進めていきます。
水墨画の雲の描き方
水墨画で雲を描く手順は、
①、エンピツで輪郭を描く
②、薄い墨を重ねていく
③、②をひたすら繰り返し
こんな感じで、雲単体を描く場合は別に書き出さなくてもいいじゃん、ってぐらいのすごく単純な流れになっておりまして。
①の「輪郭を描く」がいちばん重要な手順になっております。これはエンピツじゃなくて直接筆で輪郭を描いても面白いです。
筆のいきたいようにいかす、みたいな感じで。
水墨画の雲の描きかた①形は均一にならないように
まず、雲の輪郭を描いていくのですが、雲は自然のものなので同じ形のものは存在しません。偶然似たような形はあっても、まーほぼほぼ違う形をしてますよね。
雲とか水とか火とか自然のものは形がすごくランダムなんです。
たとえば「入道雲」。
誰がみても雲ってわかるThe・雲って感じの代表的な雲です。
これをたとえばこんな感じで規則正しく描いたとしたらどうでしょう?
雲を表現したボコボコが規則正しくキレイに並んでしまうとなんかすごく作りもの感が出て、不自然で気持ち悪いですよね。
それではこれならどうでしょう?
こんな感じで同じボコボコでも、大中小いろんなボコボコをランダムに並べると自然な感じに仕上がるのがおわかりいただけるかと思います。
自然物を描く時はランダムに描いていくと自然な感じに仕上がります。
描く時のコツは下の動画みたいにあっちいったりこっちいったりしながら描くことです。
慣れると連続で描いても自然な感じに仕上げることができるようになるのですが、最初はこの動画みたいにあっちいったりこっちいったりしながら描くのがいいと思います。
輪郭がうまく描けたら雲は7割方完成といっても過言ではありません。
人間の不思議な感覚
少しばかりマニアックなお話です。
僕ら人間の脳は「自然のものは形が規則性がなくてランダムになっている」っていう認識を持っているようで、それが規則正しく並んでしまうと不気味に感じてしまうみたいです。たぶんたまたま偶然で雲が同じ形、同じ大きさで規則正しく並んでたとしたら、何か不吉なことが起きるんじゃないか、って錯覚してしまうと思うんです。モーニンググローリーなんかはそんな感じですよね。
参考⇒モーニンググローリー
これは雲が巨大なロール状の帯になっていて、長いものだと1000キロを超えると言われていて、なんともいえない不気味さを感じます。
なので、自然物はできるだけランダムに表現した方が観た人は「安心感」を得られるんです。
薄い墨を何回も重ねる
輪郭が描けたら、次は雲のモコモコ感を表現していきます。
モコモコ感を出すためには、球体をたくさん描くイメージをしながら薄い墨を何度も何度も重ねていくと描きやすいです。
関連記事⇒【水墨画の描き方】難しい技法がなくても楽しんで描く方法:初心者必見
墨が乾くのを待ったりするので時間をかけてゆっくりあわてず。
やり方は紙を水でたっぷり濡らして、その上に墨を乗せていく、っていう「たらし込み」という水墨画の技法です。
↑早送りなのでわかりにくいかもしれませんが、こんな感じで、まず水を紙に染み込ませてそれが乾かないうちに水の上にサッと墨を乗せます。
一度墨を乗せたらそれが乾くのを待って、もう一度水を染み込ませてさらに墨を乗せていきます。そうするとさっきよりも墨が濃くなって立体感あふれる感じになります。
そしてそれを何回も何回も繰り返すと、イイ感じに雲っぽくなるので、やってみてください。
注意すべきポイントは、輪郭の時と同じようにランダムに描いていくことです。あっちいったりこっちいったりラジバンダリ。
で。その作業を全体的にひたすら繰り返します。かなり地道な作業なので時間がかかりますが、だからこそこんな雲の絵ができるのです。
そしてもうひとつ大切なポイントは陰影をつけることです。陰影をつけることで、雲の立体感と浮いてくる感じを表現できます。
ここでの大事なポイントは光がどこからきてるかをしっかり把握することと、雲の形をしっかりみることです。
特にこういう入道雲みたいな雲だと特に、至るところでボコボコになっているので規則性が皆無です。
なのでひとつひとつのボコボコをしっかりみてひとつずつ丁寧に仕上げていきます。
これもすごく時間のかかる作業ですが、神は細部に宿るという言葉があります。ひとつずつ丁寧に仕上げることが素晴らしい作品への近道です。
そして何よりも、そもそも絵は基本的に地道な作業の積み重ねです。時間をかければいいものができる、というわけではありませんが、緻密に作り上げたものには必ずそれ相応の時間がかかっているのが世の常です。
頑張りましょうっ。
詳しい描き方はオンライン水墨画教室「水暈墨章」で丁寧に解説しているのでよろしければそちらもごらんください。
雲は水蒸気のかたまり
雲は空に浮かんでいる水蒸気が集まってできたものです。
なので近づいてみるとわかりますが(飛行機乗ったときとか!)、お風呂屋さんで湯気を見てるあの感じのスケールが壮大になったバージョンで、たくさんの細かい粒が縦横無尽に空に浮いてるのが雲なんですね。
僕らはそれを遥か遠いところから見てるので、形が一定のように見えますが、実際は空気の流れに乗って常にゆらゆら動いてるんですね。
同じ形の雲が存在しないのと、ランダムに描いた方がイイっていう理由はまさにココです。
一方で、墨も細かい粒が集まってできたものなので、雲と同じことになっています。
水を使って墨の粒をアチコチに散らすことで、限りなく雲に近い表現ができるのも水墨画ならではの面白さだと思います。
立体感を出すコツ
さて。
雲を表現する上で立体感は不可欠です。
不可欠かどうかは場合によりけりですが。
表現できるものをあえて少なくすることはいくらでもできるので、この際できるようになっておきましょう。
立体感を出すためのコツは濃いところと薄いところのメリハリをしっかりつけることです。
下の画像を見比べてみると一目瞭然です。
同じ形で雲を描いたものですが、明らかに濃く表現してる方が立体感を感じられると思います。
これはある程度全体が仕上がった後に、濃い墨を作って先ほどと同じように紙に水を染み込ませてその上に濃い墨を乗せることで表現できます。
まとめ
以上、水墨画の雲の描き方をお送りしてまいりました。
難しそうな感じがしますけれども、難しいのは最初の輪郭を描くところだけです。それが7割。
そこさえクリアできればあとはひたすら墨を重ねていくだけ。
あとは時間と自分自身との戦いです。笑
完成するまでにはホントに気が狂いそうになるほど何回も何回も墨を重ねていかないといけませんが、途中経過でもちゃんと雲は感じれると思うので、それをエネルギーにすれば乗り越えれるハズです。
がんばればいろんな雲を描けるようになります。↓↓↓
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