おはよーございます。
水墨画家のDです。
絵はバランスがとても大切です。
どれぐらい大切かというと、子ネコが大人ネコになるという、大事件が起こってしまうぐらい大切です。
下の画像をごらんください。
これはネコですよね。
いたって普通のネコですよね。
ところがどっこい。
輪郭やら目やら口やらもろもろまったく同じものを使って、それぞれのパーツが下の方に集まると、なんと子ネコにみえるんです。
これはそれぞれのパーツをいじくったりしていません。
ただただそのまま移動させただけなのです。
信じてもらえないかもしれないのでこちらをごらんください。笑
それぞれのパーツの位置関係を変えただけでこんなにも印象が変わるのです。
しかも動かしたのはほんの数センチ程度。
※これは、どんな絵でも必ずしも数センチ位置をズラしただけで印象が変わるというわけではなく、絵によっては何にも変わらないなんてこともあるのでご注意ください。
このように。
絵はバランスが非常に大切です。
そしてここからが本題なんですけれども。
絵のバランスにはいろんなバランスがございまして。
その中でも特に大切なのが画面全体のバランスです。
画面のどこにモチーフを配置するのかとか。
どのくらいズームにするのかとか。
背景とモチーフの位置関係をどうするのかとか。
そういうのは人がみた時にいちばん最初に目に飛び込んでくるところです。
その後に先ほどのネコのようにモチーフそのもののバランスが目に入って、そしてさらに細かいところまで目がいく人は線そのもののバランスなんかをみたりするわけです。
ひと口にバランスって言ってもいろいろござるんです。
画面全体のバランスを考えることを「構図」といいます。
構図はホントに奥が深くてですね。
一概にこうすればいい、みたいな正解がないのです。
自由に、好きなようにやっていいんです。
たとえばこれ。
いつかは忘れたのですが、電車の中の広告かなんかでこの広告をみたんです。これはフェルメールの「牛乳を注ぐ女」という作品です。
作品自体は有名で僕もそれは知っていたのですが、なんちゅー問題出すねん!?と、すごく印象的だったのでいまだによく覚えています。
こんなもん正解なんて人によって分かれるじゃないか?と。
でも構図ってこういうことなんですよね。
構図の良い悪いはみた人の感性に委ねるしかないのです。
それよりも何よりもまず、大事なのは自分自身でよし!これはいい!って思えるかどうかっていうところです。
自分で微妙だなと思ってるものを人にはおみせできません。
なので。もう頭の毛がなくなるんじゃないかっていうぐらいすっごい悩むのが構図です。
同じ絵でも切り取り方で印象が変わる
構図の奥の深さがわかるお話をひとつ。
こちらの二枚の絵をごらんください。
ふたつとも同じ絵ですが、一部分をアップにするだけでずいぶん印象が変わるのがおわかりいただけるかと思います。
元の絵は、夕焼けの海を背景に、サーフボードを持った女の子の後ろ姿を描いています。
夕焼けの海という思いっきりベタな構図ですが、女の子の全体像がみえてノスタルジックな雰囲気が出てるいい構図ですね。
今からサーフィンでもするのかしら?
これは女の子を真ん中に配置することでこの絵の主役は女の子なんだということを強調できる王道の構図です。
一方、それをアップにした絵の方は、アップにしただけなので、ノスタルジックな雰囲気が出てるとか基本的なところは変わっていません。
でも、アップにして女の子を画面の右側に配置したことでサーフボードをもってることがわからなくなっています。
そして顔が近くにあることで、後ろ姿で表情はみえないけど、なんとなく切なさが増したような感じになっています。
こんな感じでですね。
同じ絵でも切り取り方を変えるだけでこんなにも印象が変わるんです。
ね?
めっちゃ奥深いでしょ?
さっきのフェルメールの作品のやつと同じようにこれが正解というのがありません。
大切なのはその構図にすることによって何を表現したいか?です。
これは、オリジナルの絵を描く時に多くの人がぶち当たる問題なので、模写をする時とか他の人の作品をみる時とかに「なんでこの絵はこの構図にしたんだろう?」っていうことを深く深く考えてみてください。
あなたの心が揺さぶられた作品の構図には作者の何かしらの意図があるハズで、まんまと術中にハマったのです。
僕自身もこれまでにいろんなの作品の術中にまんまとハマって、たくさん心を揺さぶられました。
今度はあなた自身が人の心を揺さぶれる絵を描けるように、まずは構図の知識を頭に叩き込んでみてください。
構図の基本
先ほど構図は一概にこうすればいい、みたいな正解がないと言いましたが、基本的な考え方みたいなものはあります。
要は、写真に置き換えて、カメラをどこに置いて、どんな距離で枠の中に収めるかを考えるのが構図です。
スマホのカメラ機能を使えばすごくわかりやすいです。
スマホを縦するのか横にするのか。
はたまた正方形にするのか。
まずそれだけでも絵のみえ方は全然違ってきます。
これは何をメインにするかによっても変わってくるし、モチーフの形とか配置によっても変わってきますよね。
たとえば人物画を描くってなった時に、モデルの人が立ってる構図だと、スマホを縦にした方が高さと奥行を表現できます。
寝そべってるモデルの人だったらスマホを横にした方が体全体を枠の中に収めやすいです。
他にも、正方形の枠にして顔のパーツだけをドン!っとど真ん中に表現する、なんて構図もあります。
これらはほんの一例で、モデルの人が立ってるからといって必ずしも縦にするわけではもなく、先ほどのサーフィンの女の子の絵のようにあえて横にして背景を際立たせるような構図にする、とかも考えることもできます。
寝そべってるモデルの人の場合も同じことがいえます。
ちなみに横長の構図は、人間の視界に近い印象になるので安心感が生まれたりします。
だから風景画は横長の構図が多いんですね。
縦横にキッチリ合わせないといけないこともなく、あえて躍動感を演出するために全体的にナナメにしてみたりとか。
これらはほんの一例で、基本中の基本中の基本ぐらいの考え方です。
もっといろんなパターンが考えられるし、何をどう表現したいかによってめちゃくちゃ変わってきます。
それこそ決まりはないので、無限の可能性を秘めているのが構図です。
だからこそ奥が深すぎて底がまったくみえません。笑
その中でも、「多くの人が美しいと感じやすい」と言われている、王道のパターンというのが存在しているので、いくつか紹介して終わります。
こういうのを知識として持っておいて、いろんな絵をみた時に「あ、これ◯◯だ!」って気づいたりするとなかなか面白いですよ。
王道の構図パターン
■分割法
これは画面を直線で均等に区切ってバランスをとることで全体的な見映えがよくなる構図で、二分割法、三分割法、四分割法などがあります。
画面を二分割にして、その線を水平線にしたり地平線にしたり。
画面を分割した線上にモチーフを配置することで全体的な見映えがよくなったりします。
■三角構図
画面の中に三角形を作ることで奥行きとか広がりを表現できるのが三角構図です。
建物とかをこの構図で描くと高さと、どっしりとした安定感を表現できます。
他にも似たような感じの放射線構図とか対角線構図なんていうのもあります。
■日の丸構図
日の丸のように画面の真ん中にモチーフを配置することで迫力を出すことができる構図です。
でも一歩間違えると何の工夫もない構図になってしまうので注意が必要です。
似たような感じの画面が左右対称だったり上下対称だったりする、シンメトリー構図なんてのもあります。
■面白い構図
ここまでは構図の中でも特に王道中の王道といわれているものばっかりです。
こういう構図はそこかしこにたくさんあるので注意してみてみてください。
ここからは一風変わった面白い構図を紹介します。
■レイルマン構図
鉄道写真家の中川精也氏が考案したのでこの名前がつきました。
縦に四分割した線と対角線が交わったところにモチーフを配置するという、三分割法に似た感じの構図です。
画面に広がりを持たせたいような風景画と相性がいいと言われています。
■黄金比率
人間の目に「美しい…」と感じてしまう黄金の比率というものが存在します。
それが1:1.618です。
この比率を使ったのがファイグリッド構図とフィボナッチ構図です。
これがファイグリッド構図です。
これがフィボナッチ構図です。
ファイグリッド構図は三分割法やレイルマンに似てるところがあって、画面に広がりを持たせたい時に使うといい感じになります。
フィボナッチ構図はフィボナッチ螺旋とも呼ばれていて、この世でいちばん美しいバランスと言われる構図です。
かの有名なダ・ヴィンチのモナリザもこのフィボナッチ構図で描かれているとかなんとか。
まとめ
以上、画面全体のバランス「構図」の考え方でした。
構図は本当に奥が深くて僕自身もまだまだ研究中です。
大切なのは自分自身が何を表現したいか、っていうことです。
人に何を言われようが、そこは自分の感性を信じて突き通してください。
そこをねじ曲げてしまうと大変なことになります。
それではまた〜。