【水墨画の描き方】誰にでもできるお手軽な方法

こんにちは。水墨画家のDと申します。

Dの水墨画作品

Dの水墨画作品

水墨画は敷居が高くて難しそうなイメージがありますが、実際のところは初心者でも簡単に始めやすい、すごくシンプルな絵画です。油絵とか水彩画とかいろんな絵画がある中でも水墨画はダントツで簡単です。

理由も簡単で、水墨画って白と黒しか色を使わないからです。

ほかの水彩画とか油絵とかだと、まず色の知識が必須です。何色と何色を混ぜたらこうなる、とか。そういうことを勉強しないとワチャワチャなっちゃうんですね。

水墨画はそういった色彩の知識は一切必要ないんです。これはめちゃくちゃ大きいアドバンテージです。

だから水墨画って今すぐにでも描き始めることができてしまう、すごくシンプルで簡単な絵画なんですよ。

 

もうひとつ簡単な理由があって。

水墨画を描くための道具ってすごくシンプルで

「筆、墨、硯、紙」

この4つがあればおっけーなんです。

あとは水とかタオルとかお皿とかがあれば完璧なんですけど、それはたぶんどこにでもありそうなので…。笑

これもほかの絵画だと絵の具とかなんかその他もろもろたくさん準備しないといけないのでわりと大変です。

でも水墨画は最低先ほどの4つがあれば今すぐにでも描き始めることができるので、さっそく準備しましょう。

 

 

 

描き始める前の準備

 

こうしてすごくシンプルな絵画にもかかわらず、なぜか敷居が高くて難しそうなイメージがついてしまっています。

まずはそれをどうにかこうにか取っ払ってしまいたいところです。その原因は歴史とか伝統とかそういう「目に見えないナニカ」が、重くのしかかってるからです。だからなんか厳かというか、ただならぬ雰囲気が漂ってる感じにみえちゃうんですね。

ただね。

そういうイメージってなかなか拭い切れないんです。

僕もいまだにそういう「ただならぬ雰囲気」は感じてしまいますもの。

なんでかっていうと、水墨画って実は歴史がめちゃくちゃ深くてですね。

発祥はおよそ3000年前の中国です。

3000年です。笑

キリストが生まれて西暦が始まるもっと前から水墨画ってすでに存在してたんです。

厳密には水墨画じゃなくて墨絵なんですけど。

水墨画として確立したのは今からおよそ1300年ほど前の話です。それでも1000年以上の歴史があるっていう。油絵とかでもまだ600年そこそこなので、水墨画がいかに歴史が深いかがおわかりいただけるかと思います。

この途方もない数字を積み重ねてしまっているので、いわば「老舗の高級料亭」的な感じになっちゃってるんですね。

一見さんお断り!みたいな、なんとも入りにくい雰囲気を醸し出してるじゃないですか。

水墨画ってそんな感じなんです。

難しい技法はいらない

水墨画にはたくさんの「技法」があるのですが、その「技法」が難しそう…っていうのも、水墨画を始めたいけどどうしよう…ってい悩ませてしまうひとつの要因です。

それが水墨画の醍醐味でもあるのですが、その技法を習得するのにはわりとたくさん練習する必要があります。

でも今からここでやろうとしてる水墨画はそんな難しい技法は一切使わずに描けるのでご安心ください。

薄れてしまった墨文化

 

道具が普段お目にかかることがないものばかりなのも難しく感じるひとつの要因になってるのかもしれません。

昔は墨と筆で手紙とかを書いていたのでどこにでもありました。

でも明治維新以降、西洋文化がたくさん入ってきたことで墨でものを書くという、それまで当たり前だったことが一気に廃れてしまいました。

でも今や、小学校の習字の時間とかでしか硯と墨なんて見ることないですもんね。

 

 

でも今これを読んでくれてるということは、水墨画を「描いてみたい!」っていう気持ちが少しでもあるからだと思うんです。

 

いちばん大事なのってその「描いてみたい!」っていう気持ちなんです。

そういう好奇心って人を行動させるいちばんのエネルギーになるので、今のうちにとっとと始めてしまいましょう。

一歩踏み出してしまえばさっきまで「どうしよう……」って悩んでた自分がアホらしくなるぐらい、一気に前に進めます。

実際に僕もそうでした。

 

とゆーわけでさっそく道具をそろえましょう。

水墨画を描くための道具

水墨画を描くための最低限の道具は先ほども言いましたが、

 

筆、墨、硯、紙

 

の4つです。

もし。

小学校の時に使ってた書道セットが家に眠ってたら、そこに筆と墨と硯はあるはずなので新たに購入する必要はありません。

f:id:godgod23:20201201081904j:image

眠ってない場合は、ホームセンターとかで簡単に手に入るので今すぐ走ってきてください。

後は紙ですが、「水墨画=和紙」みたいなイメージがあると思うのですが、これは水墨画独特の技法を使うのであれば和紙がいちばん相性がいいっていうだけで必ずしも和紙を使わないといけない、ということではないんです。

むしろここでやる描き方だと和紙はすこぶる相性が悪いのでオススメしません。

それよりも少し分厚めの画用紙みたいなものが相性バツグンです。#理由は後で詳しく解説します。

ホームセンターに売ってるスケッチブックがちょうどいい感じなので、できれば購入してみてください。

こんなやつです。

水墨画の道具に関しては、こちらに細かいすぎるほど書いてあるのでヒマなときにでも読んどいてください。

→水墨画の道具

これで4つの道具がすべてそろいました。

それでは始めてみましょう。

墨を磨る

 

まず墨を磨ります。

硯に水を適量入れて墨を磨ってみてください。

注意点はほどよく強く、ゆっくり丁寧に、円を描くようにやることです。雑にやってしまうと墨が欠けたりして質の悪い墨液ができあがってしまうので、ここは時間をかけて丁寧にやるようにしてください。

 

このように固形の墨を磨るのがいちばんいいのですが、固形の墨って磨るのに2、30分ぐらい時間がかかっちゃうんですね。いきなりそれはちょっと…って場合は、墨汁を使っても大丈夫です。

墨汁なら5秒もかからないので超お手軽です。

墨汁を硯に入れれば完了です。

 

余談ですが、水墨画をやってるうちに墨にもこだわりというものが出てくるようになります。そうなると、墨汁では物足りなくなってしまって固形の墨を磨る方がイイ!っていう体になってしまいます。ご注意ください。

 

淡(あわ)い墨を作る

 

真っ黒な墨が準備できましたらば、細めの筆を使って水と墨を混ぜて淡い墨を作ります。太めの筆でもどっちでもいいのですが、量が多くなってしまって大変なことになってしまうので、細めの筆の方が安全かと思われます。

ここの水墨画ではこの淡い墨作りがすごく大事です。薄い墨ともいいます。呼び方なんてなんでもいいのですが、なんとなく「淡い」の方が響きがカッコイイので。笑

 

容器はこんな感じのやつを使います。

 

淡い墨は濃度を調節して2種類作っておくと便利です。

↑こんな感じの濃さと、

↑こんな感じの濃さで。

 

実際に描いてみましょう

 

これで描くための準備は完了です。

さっそく用意したスケッチブックに描いていきましょう。

先ほど作った2種類のうち、淡い方の墨に細めの筆をぶち込んでください。

 

あんまり大量に墨をふくませてしまうとそれはそれで大変なことになるのでいい塩梅で。

 

そして紙の上に筆を走らせてみてください。

キレイな線が描けましたでしょうか?

筆はエンピツよりも先っぽが柔らかいので少し戸惑うかもしれません。まずは筆で線を描くことに慣れるためにたくさん線を描いてみてください。

 

少し慣れたらその線をたくさん描いて、あなたの気の赴くまま、自由に好きなものを描いてみてください。好きなマンガのキャラクタでも、そのへんにあるようなものでも、なんでもいいです。「描きたい」と思えるようなものを。

絵は頭で考えるよりも、とりあえず手を動かして描いてみることが大切です。

失敗してもいいんです。

その失敗をたくさん積み重ねて少しずつ上達していくんです。

もし描くものがない場合はリンゴを描くといいと思います。

僕もいちばん最初に描いた水墨画はリンゴでした。

どうしてリンゴを描こうと思ったのかはナゾですが、たぶん絵の初心者=リンゴみたいなイメージがあったんだと思われます。笑

 

ここからが水墨画の面白いところです。

 

下の画像をみてもらえればおわかりになるかと思いますが、キレイなグラデーションで見事に馬を表現しています。

こんな感じで濃いところと薄いところをしっかり描き分けると浮いてくるような感じを表現できるんです。

この浮いてくる感じが僕の描き方の真骨頂で、描いててワクワクしてくるんです。

他ではなかなか味わうことのできない独特の表現方法です。

ぜひやってみてください。

 

難点は薄い紙だと表現しにくいところです。

墨は水分を多く含んでいて、それが淡い墨となるとさらに水分量は増します。

しかもその淡い墨を何回も何回も重ねることによってこの浮いてくる感じを表現するので、薄い紙だとすぐにボロボロになってしまうんです。

 

分厚めの紙の方がいいといってスケッチブックをオススメした理由はまさにここです。

スケッチブックはわりと分厚めに作られているので、水分を大量に吸収してくれて、墨を何回重ねてもなかなか破れることはありません。

 

紙も墨と同じようにやっているうちにこだわりが出てくるようになります。

もっと目が細かい方がイイ!とか。

もっと分厚い方がイイ!とか。

 

それはたぶんもうちょっと先のお話なので、その時は「水彩紙」っていう水彩画用の画用紙をオススメします。

僕のオススメは「アルシュ」という紙です。

それまでは、スケッチブックの紙でじゅうぶん事足りると思います。

僕もしばらくスケッチブックで水墨画を練習してたので。

 

で、ですね。

実際に墨で線を描いていると、時間がたてば乾いていくことに気がつくかと思います。

 

この乾き具合によって墨の重なり方が全然違ってくるんです。すごく細かいところで、秒単位のできごとなのですが、そんな細かいところも気にしながらやるとより表現の幅が広がって、いろんなグラデーションを楽しめると思います。

 

完全に墨が乾ききって、その上に新たに同じように線を重ねるとこんなふうに線の輪郭がクッキリ残る感じになります。

 

 

水分が紙にまだ残って、墨が乾ききる前に線を重ねると線の輪郭がぼやけてにじんだ感じになります。

 

この違いをいろんなところで臨機応変に使い分けて、あなたの表現したいものを描いてみてください。

 

これが「お手軽な水墨画の描き方」の基本中の基本です。

 

これなら難しい技法を使わなくても、エンピツで絵を描くように簡単に水墨画を描くことができます。

注意点はエンピツとは違って、墨は一度描いてしまうと消すことができません。失敗するもまたイチからやり直すハメになってしまいます。泣

 

ちょっとした小技

 

基本的な描き方はエンピツと同じように線を重ねて描く方法ですが、それをちょっとレベルアップしてある「小技」にするとさらに表現の幅が広がって、より楽しむことができます。

まず基本的な描き方で描いた馬がコチラです。

これでもだいぶ「浮いてくる感じ」は表現できているのですが、基本的な描き方だけで描いたものなのでちょっと重ね方が粗くなってしまってるんですね。

なので、馬のお腹の丸みとかが少しカクカクしてしまって、馬の体の丸みがイマイチ表現できていません。

 

そして「小技」を使って描いた馬がコチラ。

どうでしょう?

全然違いませんか?

グラデーションがすごく滑らかになっているのがおわかりいただけるかと思います。

「小技」を使うとこんなにも滑らかなグラデーションを表現できるようになるんです。

 

これをどうやってやるかというと。

まず、先ほどと同じように淡い墨を含ませた筆と、もう1本水だけを含ませた筆を用意します。

できればもう1本細めの筆があるとやりやすいのですが、太い筆しか残ってない場合はそれでも大丈夫です。

 

水だけの筆で紙に水を染み込ませます。

その水が乾かないうちに上から淡い墨をサッと乗せます。

そうすると、水の表面張力で淡い墨がジワ〜〜っと広がっていきます。

 

これが「小技」です。

これを何回も何回も繰り返していくと、先ほどの馬のようなキレイなグラデーションになっていきます。

ポイントは淡い墨を乗せたら乾くまで待つことです。

乾かないうちにさらに墨を乗せても水が増えていくだけで墨は濃くならないので。

 

この小技は水と墨の順番を入れ替えてもできます。淡い墨で線を描いてその墨が乾かないうちに水だけを含ませた筆でサッと伸ばします。

すると同じように水の表面張力でジワ〜〜っと広がってくれてキレイなグラデーションができあがります。

 

線の一部分だけに水だけの筆を乗せると片方はクッキリ、片方はグラデーションっていうふうに表現することもできます。

 

さっきの馬ではそのテクニックを多用しているので探してみてください♫

 

コツは墨を含ませた筆と水だけを含ませた筆、2本の筆をそれぞれ右手と左手に持って、墨が乾く前にサッと入れ替えることです。

墨はけっこう早く乾いてしまうので時間との戦いです。

 

水墨画を描きやすくするために下描きをする

 

墨は一度描いてしまうと消すことができないシロモノです。

間違えてしまった時の絶望感ときたら、、、。

それはそれは凄まじいものがあります。

マジで泣きそうになるぐらい。泣

できるだけそのリスクを避けるために、エンピツで下描きをしておくことをオススメします。

 

スケッチブックとか水彩紙なら紙が分厚いのでエンピツで描いた線は後で消すことができます。

和紙とかだとエンピツで描いた線ってなかなか消しにくい上に、紙がグシャグシャになってしまいます。なので和紙は下描きは不向きです。

分厚めの紙はこんなところでも大活躍してくれます。

 

少し踏み込んだ話をすると、普通の絵画って色があるじゃないですか。色があるとそのぶんその絵の情報量って増えるんです。

人間の目は色でそれが何かを判別することが多いので、物の形とかってそこまで気にしないんです。

水墨画って色っていう情報がなくて、白と黒だけですべてを表現しないといけないんですね。

色っていう情報がなくなると物の形とか全体のバランスとかがすごく気になり出すんです。

そんなもんなんです、人の目って。

 

下描きをオススメする理由はまさにココで、物の形とか全体のバランスは何回も何回も納得いくまで修正した方がイイんです。

そのために消しゴムで消せるエンピツを使って下描きをするんです。

 

で、その上から墨を乗せた方が間違いなく作品のクオリティは高くなります。

 

水墨画は下描きをしないのがセオリーみたいな風潮がありますが、それは先ほどお話したみたいに和紙との相性があまりよろしくないからです。

 

そもそも和紙以外に水墨画を描くこと自体、あんまりやる人いないので。笑

 

というわけで、そんなセオリーはここでは無視してもらって大丈夫です。

まとめ

 

基本的な水墨画の描き方はだいたいこんな感じです。

自由に描けましたか?

もし自由に描くことができたなら、それはもうそのまま描き続けて、素晴らしい水墨画をこの世にたくさん生み出してください。

 

自由に描けない場合は、基本的な画力が足りてないものと思われます。

僕の水墨画の処女作はこのリンゴですが、いきなりこんなふうに描けたのは、筆で描く前にひたすらエンピツで画力を上げてたからです。

 

画力を上げるならオンライン絵画教室「Dの部屋」がオススメです。ただいま無料で公開中なので一度のぞいてみてください。

質問や相談も絵画教室の中で受け付けています。

届いたメールに返信する形で僕のところに届くので何かあったらそこからお願いします。