Dの水墨画作品
水墨画に使う道具に墨があります。筆があっても水があっても紙があっても、墨がないと絵は描けません。いちばん大事な道具と言っても過言ではないかもしれません。
そんな大事な墨なんですが、種類が多くて何を使えばいいのかわからないっていう問題を抱えております。まして初心者だと何を使えばいいの?ってなりますよね。安くてお手ごろなものからウン万円するような高級なものまでさまざまです。どこをみて何を選べばいいのか?
自分に合った墨を選ぶために少しだけ墨を勉強していってください。
そもそも墨ってどんなもの?
墨墨とゆーてますがそもそも墨ってなんぞや?というのがわかると墨に愛着がわいて、使うときに優しくできるかと思います。
同じように「すみ」と読む「炭」がありますが実はふたつとも同じ「炭素」からできています。「炭素」は簡単にいうと燃えカスです。だから木炭でも字を書いたり絵を描いたりすることはできます。でも木炭は水と合わせて磨ってもあんな真っ黒な液体はできません。
墨も炭も同じ「炭素」なのですが、何が違うのかというと、『墨』は菜種油とかごま油から取った煤(すす)という黒い粉(これも炭素です)を膠(にかわ)という接着剤みたいなもので練って固めたものです。
水とあわせて磨ることができる固形の『墨』になるにはかなりの数の工程を踏まないといけません。ひと手間どころか、ふた手間もさん手間もかかっています。「墨」には、作る職人さんの愛情がたっぷり詰まっています。
今はそんなことまったく思っていませんが、「たかが墨」とか思っていた過去の自分を蹴り飛ばしてあげたいです。
墨の歴史
墨はもともとは中国で紀元前1100年ぐらいから使われてたものが奈良時代に日本に伝わってきたとされてます。もうこの時点であんまりピンとこないかもしれませんが、かなり昔から日本には墨があったということになります。歴史的にみると人は3000年もの間、墨を使って文字を書いたり、絵を描いたりしているということになります。すっごいですね。
今日の僕らの文明が急速に発達しだしてまだ100年もたってないということを考えると、ずいぶん長い間形を変えることなく使っていることになります。多少の変化はあるにしても作りかたも形も大きくは変わっていません。たぶんそれってすごいことだと思います。1000年以上も姿形を変えることなく伝わっているものってそんなに多くないと思います。いやー日本って素晴らしいですね。
そんな『墨』はいくつか種類があってそれぞれ微妙に違っています。
水墨画で使う墨?
墨には「書道用」っていうものもあったりしますが、実は書道用も水墨画用もなくて墨はただの墨です。それを書に使うか、画に使うかはその人の自由です。特に決まりはなくて、たぶん墨を作る職人さんも「好きに使ってくれぃ!」っていうスタンスなんじゃないかなと思ったりします。
現に僕は「書道用」と書いてある墨を水墨画に使っていたことがありますが特に問題なく絵を描くことができました。使えればなんでもいいのです。厳密には違いがあったりするかもしれませんが、そんなことは知ったこっちゃありません($・・)/~~~
墨の種類には大きく分けて、青墨と呼ばれるちょっと青っぽい感じの松煙墨(しょうえんぼく)と、茶墨という赤っぽい感じの油煙墨(ゆえんぼく)の2種類があります。
朱墨と呼ばれる真っ赤っかな墨以外は基本的には黒い色で青っぽいものと茶色っぽいものがあります。
これは青墨で描いた絵です。
これが茶墨で描いた絵です。
この画像ではわかりにくいかもしれませんが青墨はどっちかっていうとクールな感じで、茶墨はどことなく暖かみのある感じがするんです。
どんな墨を選ぶかは、大部分は個人のお好みであとは何を描きたいかによって決めればいいと思います。僕は茶墨と青墨を使ったことがありますが、個人的な好みとしては青墨のほうが好きです。
ちなみにですが、青とか緑といったいろんなバリエーションの色の墨も売ってたりします。そんなのも使ってみると面白いんじゃないかなと思います(*^^*)
古墨と新墨
作られてから長い年月が経った墨を「古墨(こぼく)」といいます。
それに対して作りたての墨のことを「新墨(しんぼく)」といいます。
墨は乾燥すると膠という接着剤が分解されて伸びがよくなるんだそうです。墨の世界では新しいものよりも古いもののほうが良いとされてます。理由は、作りたての墨は水分が多くて膠の成分が出過ぎるので、ネバネバで紙に書くときに滲みがわかりにくくなるという特徴があるからです。でもそれをあえて表現としてとらえて作品に生かすこともできるので、一概に「古いから良い」ということは言い切れないですね。
古い墨はかなり貴重なシロモノでお値段もびっくりするぐらいケタが違っていて、ゼロがひとつ多かったりします。ひぃぃっっ(゚Д゚;)
墨汁ではダメなの?
墨を磨るのには結構な時間がかかるのでめんどくせぇっという人もわりといらっしゃいます。
そんなときには墨汁を使うといいと思います。学校の書道の時間とかではだいたいみんな墨汁を使ってたんじゃないかと思います。僕は高学年になればなるほど墨汁しか使ってなかったです。
あれは半紙に字を書くだけなので使う色が1種類あればそれでよくて、わざわざ水で薄めたりすることなんてしません。なので墨汁でも特に問題はないのですが、水墨画の場合は水で薄めてにじませたり、ぼかしたりして立体感を表現します。
墨汁だとそのにじみとかぼかしとかがちょっとやりにくいなぁという印象です。
その原因は材料にありました。墨を水で擦って作った墨液は材料が煤なので、いわばものすごく細かい黒い粉の集まったものなんですね。だから水と混ぜても粉がまんべんなくばらけてくれる感じです。
それに対して墨汁は材料に煤の代わりに化学的に作られたカーボンと、膠の代わりに合成樹脂で作られていて、極端なことをいうとビニールみたいな感覚です。なので磨った固形の墨と比べるとあんまりばらける感じがしないので、少々扱いにくい感じです。
でも僕自身もやり始めのころはバリバリ墨汁を使っていたし、正直そんなに細かいところまではわからなかったのでそんなこと気にせずに使えばいいかと思います。
そのうち墨汁使ってたらちょっと物足りないなーってなってきます。そうなったら腕が上がった証拠です(^_-)-☆
まとめ
極論ですが、墨は筆と同じでなんでもいいのです。もっというと、青墨でも茶墨でもそこまで明らかな差はないので同じかなーと。少なくとも僕はその違いは全然わかってなかったです。いろいろ調べていくうちに少しずつその違いがわかるようになってきました。
小学校の書道の時間に使うような墨でも、極端な話インクでも素晴らしい絵を描こうと思えばいくらでも描けます。高いものを使えばいい絵が描けるとかそんなことは絶対にありえません。
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素晴らしい絵を描いて「これ安いやつで描いてますねん」っていうほうが圧倒的にカッコいいなと僕は思います。
高い墨だと10万円近くするものもあって、ようやく僕もどんな墨なんだろう?と興味がわくようになりました。
最初のころはそんなもの使いこなせるわけがないので手が震えてました。
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