消しゴムーーー
それは描いた線を消すことができる魔法のようなアイテムです。
間違えて引いてしまった線を消して新たに正しい線を引くことができる。
絵の練習をしたり、作品を仕上げるためには必須のアイテムです。
消しゴムにはもうひとつ素晴らしい役割があります。
ただ間違えた線を修正するだけでなく、紙を無駄にしないという地球環境に優しいという側面もあります。
そんなことを言っていますが、はっきりいって今回のお話は地球環境にはあまりよろしくないお話かもしれません。理由は大量に紙を使うからです。
消しゴムを使ってしまうとあるひとつの部分しか修正できないので技術の向上に偏りが生まれてしまいます。絵の技術向上という一点に的をしぼって考えた結果、消しゴムを使ってその都度修正するよりも何枚も紙を使ってイチから練習したほうが絵の技術は向上するという結論に達しました。そんなお話です。
絵の練習に欠かせないものとは何か?
まず、何のために絵の練習をしますか?
人に見せるため?
絵を売るため?
最終的な目標は人それぞれあるかと思いますが、根本的なところは「絵を描くのが上手くなりたい」だと思います。そしてそのために必要なことは「反復と継続」しかないっす。
簡単に上手くなれる方法はたぶんぼ僕が知る限りではないと思います。
どんなに上手な人に教えてもらったとしてもすぐにうまく描けることはありません。
人それぞれ持って生まれた資質とかにもよりますが、いきなりプロ並みの絵が描ける人なんていません。
それは絵だけではなくスポーツや楽器、なんでも同じです。
最初から優れた技術を持っている人なんていないです。地道な練習を繰り返して体に覚えさすことでしか得られないもの、それが「技術」です。
たとえばプロ野球の世界でどんなに名コーチ、名監督と言われてる人でも1週間や1ヶ月という短い期間で名選手を育てることなんて不可能です。
まして、プロ野球の選手というのはプロに入るまでに小学校から高校、大学まで毎日毎日必死に野球の練習を重ねた、チームの「エースで四番」クラスの人たちです。
そんな過酷な競争を勝ち抜いてきた人たちの中でも選ばれた人だけが足を踏み入れることができるような超シビアな世界がプロ野球です。
そんな選手たちでも一流のプロになろうと思ったらそこからさらに練習を重ねてさらに頭ひとつもふたつも抜きん出なければなりません。
どんな世界でもこれは同じなんです。
とにかく反復して継続することでしか技術はついてこないのが世の真理です。
でも、何も考えずにただやってるだけではやってないのと同じこと。
やるからには何かひとつでも収穫を得ないとやる気も起きないし継続もできませぬ。なので常に考えながら練習するのがいいと思います。
長々と前置きしてしまいましたがこの話と消しゴムがどう結びつくのか?乞うご期待。
消しゴムを使わずに何回でもイチから描きなおす
反復と継続が大事だとしつこく言いましたが、消しゴムを使わずに、間違えたら新しい紙を出してイチから描き直すとすごく練習になります。
そんなことしたら紙がもったいないですか?ええ、おっしゃるとおりです。
何枚も紙を使ってしまうことになるかもしれません。それでいいんです。
でもよく考えてみてください。打ち合わせや会議で使う資料や書類、ムダに何回も流れてくるFAX、ほかにもいろいろありますが、あれこそただのムダ使いです。
いいえ。そんなことはどうでもいいのです。
僕はそんな練習方法をしてきたので、たぶん紙を何枚もムダにしてきました。でも僕がすっごい世界的な画家になったらそのムダにしてきた紙にすら価値が出てくるのでそれもいいかなと思ってます。
絵を描いてたら間違うことってたくさんありますよね。そのときにどうやって修正するか。そりゃもう消しゴムという便利なものを使いますよね。
僕も時間がないときなんかはよくやってましたが、途中まで描いて失敗してしまったときに消しゴムで消して続きからもう一回描き始めるという行為。あれってめんどくさくないですか?
紙がもったいないなんてこれっぽっちも思ってないですが、とりあえず早く絵を完成させたい、という気持ちが出てしまうので間違った箇所を消しゴムで消して続きからまた描き始めるという時間がすっげえもったいないのです。
時間もそうですがそれよりも、それよりももっと大切なのが集中力です。
集中力が極限まで高まってるときなんかはいったん手からエンピツを離してしまうとそこで集中力が途切れてしまいます。それってすごくすごくもったいないです。
それならいっそ瞬時に新しい紙を用意して、もう一回イチから描き直したほうが集中力を維持できるので技術は向上するような気がします。
それと、途中から描き始めてしまうと、その部分だけはうまく描けるようになるけど、途中までの部分はそのままになってしまいます。
イチから描きなおせば全体のレベルがあがっていきます。
どっちが最終的にうまくなるか、ですが僕の見立てではイチからやったほうがいいとみています。
苦手な部分とか技術が足りなくて失敗した部分を何回もやり直すというのはたしかに効率がいいのかもしれません。
でも、もっと長期的な目線で考えたら、イチから全部描き直すほうが苦手な部分を描くときにはるかにプレッシャーがかかります。「失敗したくない」って。
そのプレッシャーがかかることによって技術はより上がっていきます。僕は実際にそのやりかたでむしろ短期的に画力が上がりました。
なので消しゴムなどというものはどこかに追いやってしまったほうがいいです。
たとえば人物画を描こうとしたとき
具体的に人物画を例に挙げてどうすればいいかを解説します。
最初に顔はうまく描けたとします。
でも体を描いたら顔と体のバランスがおかしくなってしまいました。
このときに顔を残して体を消しゴムで消して顔が描いてある状態からやり直すのではなく、新しい紙をとりだしてまたイチから描き始めるんです。
ええ。
地獄的にめんどくさいです。
でもこのめんどくさい行為が絵の練習にはもってこいなのです。自分を甘やかしても技術は手に入りません。
はっきりいって苦行に近いものがあります。実際僕も何回も心折れました。
でもそれを乗り越えて今の画力を手にしたので消しゴムは机の端っこのほうにそっとおいておきましょう。
せっかくうまく描けたのに。
みすみすそれを破棄するなんて。
紙も絵ももったいないし、環境にもよろしくない。
わかります~。
だがしかしっっ。
幸いなことに日本には紙があふれかえってます。
そして究極なことをいうと別に新しい紙を使う必要はないんですね。
消しゴムで全部消せばいいのです。
でもそれは時間もかかるしめんどくさいんです。(どっちがめんどくさいねん)
消しゴムを追い込むか自分を追い込むか
この練習法ははっきりいって苦行ですが、ずっと繰り返していれば画力は必ず向上します。
消しゴムを使いたくなるときもあるけど、そこはグッとこらえて。とことんまで自分を追い込みましょうっ。
それぐらいの気持ちがないと絵はうまくなれないと僕は思ってます。
絵がうまくなりたいという気持ち。
それを強く持てばこれぐらいのことは苦行でもなんでもありません。
とっとと消しゴムさんにサヨナラしましょ。