おはよーございます。
水墨画家のDと申します。
初心者でも簡単に水墨画を描く方法をお伝えしていきます。
水墨画を描いてみたいけどどうすればいいかわからない……
なんか難しそう……
そんな不安を抱える水墨画初心者さんでも水墨画を楽しめる方法を解説していきます。
水墨画を簡単に描く方法①ぬり絵みたいに描く
水墨画といえばいろんな技法を駆使して濃淡やかすれなどを表現して和紙に直接描いていく、というのが一般的です。
しかししかし。
その技法はかなり高等テクニックなのでかなり練習を積まないとなかなかできるものではありません。
じゃあその技法が使えないと水墨画は描けないのか?というと、そんなルールはどこにも存在しません。
自由に表現できるのがアートです。
じゃあどうすればいいのか?
ぬり絵のように描けば、技法を使えない初心者でも簡単に水墨画を楽しむことができます。
こちらの写真をごらんください。
こんな感じで、あらかじめエンピツで下描きをして、後は墨を重ねていくだけで絵は完成するというものです。
具体的に解説していきます。
水墨画を簡単に描く方法②紙は分厚めの画用紙を使う
まず道具は一般的な水墨画と変わらず、
墨、筆、硯、紙
の4つです。
このうち、墨、筆、硯は書道用のももので構わないので、もし小学校の時に使ってたものが自宅に眠っていればそれを使ってもらうといいと思います。
自宅に眠ってない場合はお近くのホームセンターとか文房具屋さんにいけばだいたい売っています。お値段もリーズナブルなので手に入れやすいです。
筆に関しては100均にも書道用の大小筆セットが売っているので、それを購入すればお値段的にはさらに抑えられます。
残るは紙です。
水墨画は和紙に描くのが一般的ですが、このぬり絵のような描き方は墨を何度も重ねて塗るので、和紙だと耐えきれなくなってすぐに破れてしまいます。
あと、エンピツで下描きをした後、消しゴムでエンピツの線を消す時にも表面がボロボロになってしまうので、和紙はあまり相性がよろしくありません。
なので少し分厚いめの紙を使います。
水彩画用の紙がいちばんいいのですが、画材屋さんに行かないと手に入らないし、そこそこお値段がはるのでスケッチブックを使います。
スケッチブックもわりと分厚めの画用紙でお値段も非常にリーズナブル。
幸いなことにホームセンターにもおいてあるし、墨と硯と一緒に買うといろんなお店をハシゴする手間も省けます。
他にも水を入れる「水入れ」と薄い墨を作るための「お皿」を2枚、筆を拭くためのタオルなんかを準備します。
これは家にあるものを使えばいいのでわざわ買う必要はありません。
ちなみに僕が使っている道具はこれです。
水入れです。
500ミリリットルのペットボトルを半分に切ったものです。再利用もいいとこですが、ブサイクなみた目とは裏腹にギザギザのところが筆の水を切ってくれたりするので、重宝しています。
筆を拭く用のタオルです。
自宅にあったものを切って1枚は硯の下敷きに使っています。
そろそろ取り替えないと墨が…。笑
薄い墨を作るためのお皿です。
自宅にちょうどいいお皿がなかったので100均でプラスチック製のものを3枚ほど購入しました。
プラスチック製は墨が残るからよろしくない、と言われたりしているのですが、ちゃんと洗えばキレイに落ちるので特に問題はないかと。
水墨画を簡単に描く方法③薄い墨を重ねていくだけ
道具を揃えたら墨を磨ります。
真っ黒になるまでひたすら磨り続けます。
20〜30分ほどお時間をいただきます。
けっこう時間がかかる上に、片方の手は墨を磨り、もう片方は硯を抑えないといけないので、両手が使えなくなります。
なのでYouTubeで動画をみながらとか、音楽を聴きながらとかやるといいと思います。
墨を磨ったら薄い墨を作ります。
これを「調墨」といいます。
お皿に少し水を入れてそこに真っ黒になるまで磨った墨を何滴か垂らします。
調墨の具合はだいたいこんな感じ。
調墨ができたらさっそくスケッチブックに描いていきます。
描くものはなんでもいいのですが、とりあえず今回はこのリンゴを描いていくので参考になれば嬉しいです。
リンゴはシンプルに思われがちですが、形がひとつひとつ微妙に違ってたり色使いがわりと複雑だったりで、デッサンのモチーフによく使われている優秀な素材なのです。
食べたら美味しいし。
世界中の名だたる巨匠もリンゴをモチーフにした作品を多く残しているので、リンゴは絵画の基本とも言われているので、水墨画でもそれは同じです。
まず下描きをします。
ヘタの部分を描きます。
薄い墨で実の部分を描いていきます。
全体をみながら少しずつ丁寧に墨を重ねていきます。
この時にツヤの部分は墨を入れないで白く残しておきましょう。
墨が乾いたところにさらに墨を塗り重ねていきます。
できたら次はカゲを描いていきます。
濃い墨を重ねていきます。
完成です。
このリンゴを描く手法は墨を重ねていくことで少しずつ色を濃くしていく「積墨法」という、立派な水墨画の技法のひとつです。
このテクニックを使えばどんなものでも描くことができます。
名前は覚えなくても大丈夫です。笑
たとえばこれ。
これは僕が初めて大きなサイズ(910×727mm)で描いた水墨画ですが、これを描いたのは今リンゴを描いたのと同じ積墨法です。
紙はさすがにこれだけ大きいサイズだとスケッチブックはないので、アルシュという水彩紙を使っていますが、それ以外はホームセンターで購入したものです。
筆は100均の小さい筆の方で、薄い墨だけを使って少しずつ墨を重ねて長い時間をかけて描きました。
水墨画を簡単に描く方法④表現の幅が広がるテクニック
水墨画といえば!
いちばんの醍醐味はにじみやぼかしの表現です。
にじませたりぼかしたりしてグラデーションを表現することで、描くものの幅が広がったり、奥の深い表現ができるようになったりします。
リンゴを描いた積墨法でもある程度のにじみやぼかしの表現は可能です。
実際にこの馬の絵でもそれなりにグラデーションは表現できているとは思うのですが、もう1枚の水墨画と比べるとどうでしょう?
これは積墨法ともうひとつ「たらし込み」という技法を使って描いたものです。
「たらし込み」は紙を水でたっぷりめに濡らして、その上に墨を乗せていくという水墨画の技法のひとつです。
先ほどの積墨法ではまさにですが、水を使わずに墨の線を描いた場合は、わりとすぐに紙に馴染んでいってあっという間に乾いてしまうんです。
墨が乾く前に新たに墨を乗せるとイイ感じでにじんだりしてグラデーションを表現することもできるのですが、いかんせん時間との戦いだったりするので、失敗するリスクがけっこうあるんですね。
そこで「たらし込み」という技法を使えばきれいなグラデーションが表現できるし、失敗するリスクも少なくてすみます。
さらにそれを重ねていけば厚みが増してかなり浮いてくるような表現が可能になり、立体感や存在感がものすごいことになります。#サヨナラ語彙力
冒頭で紹介した作品はたらし込みをふんだんに使って描いた水墨画です。
この水墨画の立体感や存在感は、写真でみると伝わりにくいようで、実物をみてくれた人はだいたい「写真と全然違う!!」と賞賛してくれます。
ぜひ一度手に取ってごらんください。
水墨画を簡単に描く方法⑤画力の底上げをすればさらに楽しくなる
このぬり絵のような描き方は初心者でも水墨画を楽しめる仕様になっています。
ぬり絵は小さい子どもでも楽しめるものなので、大人ならさらに楽しめること間違いなしです。
ただ。
ひとつだけ問題があります。
それは下描きを上手く描けるかどうかっていうこと。
ぬり絵はあらかじめ下絵が描いてあるのでそこに色を塗るだけで完成しますが、この水墨画の描き方だとそうはイカの○玉です。
下絵も自分で描かないといけないという壁が立ちはだかってきます。
市販のぬり絵で練習するとか、ネットで検索すればある程度の下絵的ものは出てきますし、それで練習をする、というのもひとつの方法ではあります。
しかししかし。
それでは満足いかないのが絵描きとしての心意気でしょうっ。
やっぱり最初から最後まで自分の手で水墨画を描きたい!という欲望を抑えきれないのではないでしょうかっ!?
そうするためには画力アップさせることが必須です。
先ほどのこの水墨画をもう一度ごらんください。
これは僕が水墨画を始めたばかりの頃に描いた水墨画作品で、まだたらし込みの技法を使っていません。
そんなテクニックがあることを知らなかったし、積墨法だけでもじゅうぶん楽しめたからです。
それでいくつか水墨画作品を描いてるうちになんだか物足りなくなって、たらし込みという技法を使うようになりました。
水墨画自体はまったくの初心者に近いような状態であれだけの水墨画が描けたのは、水墨画を始める前にひたすら画力を上げるための練習を積み重ねていたからです。
画力は「画面を構成する力」のことで、そのうちのひとつに描写力っていうのがあります。
描写力は手を自由自在に操って線を思い通りに描く力のことで、早い話が絵が上手く描けるかどうか、です。
でも上手いだけの絵はこの世の中にはたくさんあるのですが、それ以上の何かを感じさせる絵を描けることが画力があるっていうことです。
これ以上は長くなるので詳しくはコチラから読んでみてください。
関連記事⇒【画力を上げる方法】画力にはいろんな要素があるから描くだけじゃダメなんです
話を戻します。
このぬり絵のような水墨画の描き方は、!エンピツ画に非常に似ています。
エンピツ画はエンピツで描いた薄い線を重ねて少しずつ濃くしていくものです。
そしてより濃い箇所はエンピツの濃度を変えたりして、さらにコントラスト(明暗の差)をつけていきます。
これ、この水墨画の描き方とまったく同じなんです。
違うのはエンピツは力加減で濃淡を表現しますが、水墨画はそれがない。
力を入れると筆がグシャッと潰れてしまいます。笑
明るい箇所は紙の白さで表現するところもまったく同じだし。
それも初心者で水墨画が描けた要因のひとつなんだろうなーと思っています。
もうひとつは、エンピツで練習する時に、「これを水墨画で描くならどうする?」っていうのを常にイメージしながら描いてたことだろうなと。
っていうのも。
その画力アップの練習をする前に、まだ画力も何もない状態の時にとりあえず水墨画を描いてみよう!と思って挑戦してみたことがあったんです。
自信はあったんです。
絵は小さい頃からドラゴンボールとかドラえもんとか描いてて、まわりの人から「上手い」って言われてたので。
水墨画もできるだろうと思ってたんです。
ところが結果は見事に大惨敗……。
頭の中で描いてたものとは程遠い最悪の水墨画ができあがってしまいました。
何よりも筆の扱いが難しすぎて、全然思うように描けませんでした。
自分でみても恥ずかしくなるような出来ばえで、とてもじゃないけどおみせできるようなシロモノではございません。
その自分の画力の無さに落胆しきった僕は、水墨画よりも先にやることがある!と奮起して、そこから毎日毎日エンピツで画力アップのための猛練習に励みました。
そうしてるうちに画力が上がったなっていうのが自分でもわかるぐらいになったので、改めて描いてみたのがこのリンゴの水墨画です。
そんなにたいしたものにはみえないかもしれないですけど。笑
そして墨じゃなくてなぜか青いインクを使って描いてるという、謎のリンゴなのですが。
僕の中ではこれは過去に大惨敗があって、そこから頑張って練習積み重ねてよし!イける!と思って初めて墨を重ねて描いた水墨画なんです。
リンゴの水墨画としての出来ばえはそんなにたいしたことはないですよ?
リンゴとしての完成度ウンヌンよりも、墨を重ねて描くことでこれだけの立体感とか存在感が表現できるんだ、っていうこと何よりもが嬉しかったのを今でも鮮明に覚えています。
墨を重ねるだけっていう、シンプルなのにすごく奥の深さをその時に感じて、これは面白いな!って思ってそこからさらにエンピツでの練習を重ねて水墨画の練習もたくさん重ねて先ほどの馬の水墨画を描くに至ります。
というわけで。
画力の底上げをすれば水墨画を描く時にいろんなものが描けるようになるので、もし今から水墨画を始めようと思ってるのであれば、先にエンピツでたくさん絵を描いて画力アップに励んでみてはいかがでしょうか。
僕みたいに大惨敗して凹むことがないように。笑
その凹んで挫折を味わうことで得られるものもあります。
やったろやんけ!っていう反骨心が生まれてそこから頑張れるっていう。
ただねー…。
凹み具合がハンパじゃないので。笑
画力アップのための絵画教室も無料で開催しています。
水墨画を簡単に描く方法⑥独学か習うか
僕は水墨画だけじゃなく絵全般誰にも教わったことがありません。
美大とか専門学校を出たわけでもなければ絵画教室に通ったことも一度もありません。
全部自分で考えて自分なりにやってきました。
自分だけでやって、ある程度描けるようになった時に、もっと絵の知識を深めたいなと思ったことがあったのですが、そういう絵の基本的な知識とかはネットで全部学びました。でもだいたいのことは感覚的にわかってたことなので、それを理論的にちゃんと説明してもらって「あぁーこれはこういうことだったのね」って確認するぐらいの感じでした。
水墨画に関しては完全に独学です。
ネットでいろんな作品をみてどれもこれも似たような感じで面白くないなーと思ってたのですが、ひとりだけ画風が全然違ってて、それに衝撃を受けました。
自分もそんな水墨画を描きたい!って強烈に思ったのですが、その方はかなり遠方に住んでらっしゃる方だったので自分でなんとかしようってなりました。
なのでどうやったらこんな水墨画を描けるんだろう?ってとこから始まって、それからいろいろ試行錯誤が始まって、ここで解説してるぬり絵のような水墨画にたどり着いた次第です。
誰かに教えを乞うのがイヤだったとかではありません。
唯一教えてもらいたいなーと思える人が身近にいなかったのと、自分でやった方が個性が出ていいかもなーとも思ったんです。
ネットにもそんな情報は皆無だったので。
というわけで、もし、僕の描き方をもっと詳しく知りたい!と思ってくださった場合は、オンライン水墨画教室をやっておりますのでそちらをのぞいてみてください。
水墨画を簡単に描く方法⑦まとめ
いかがでしたでしょうか。
少しでも「水墨画をやってみたい」と思っていただけたら嬉しい限りです。
それではまた〜。
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