水墨画に使う墨は固形の墨がいいのか?
はたまた墨液のほうがいいのか?
こんな疑問にお答えしたいと思います。
水墨画を本気で始めて5年。ぼくはその間に墨液も使いました。
そこから固形の墨を2、30分かけて磨って使うようになりました。
自分でいうのもなんですが、僕はかなりのめんどくさがりです。
なので絵を描くこと以外には極力時間を使いたくないタイプの人間です。
そんな僕がわざわざ2、30分もの時間をかけてまで
固形の墨を磨って使うようになったのか?
そんな経緯をお話ししていこうかと思います。
固形墨と液体墨の違い
まずは固形の墨と液体の墨の何がどう違うのか?
そこらへんのお話をしていきたいと思います。
固形墨
![](https://dshirokuro.com/wp-content/uploads/2019/02/sumi1.jpg)
まずは固形墨。
こちらは文字通り固形の墨です。
原材料は煤(すす)です。
煤とは、有機物が不完全燃焼を起こして生じる黒い粉のこと。
小学校か中学校のときに理科の授業で割り箸を不完全燃焼させて
真っ黒にしたのを覚えています。これを粉状にしたヤツです。
、でこの煤をどういう手法で採るかで墨の種類も変わってきます。
大きく分けると油煙墨か松煙墨の2つがあります。
2つの墨の大きな違いは原料の煤の粒子の大きさの違いです。
僕が好んで使っているのは松煙墨のほうですが、
それは透明感が出やすいという特徴があるからです。
とはいえ、ここらへんの話は完全に「好み」の問題なので
特にどっちがいいとかは言いません。
粒子が細かいということはそれだけ繊細な表現には向いているかもしれませんね。
繊細な表現を多用する僕にとってはまさにうってつけな墨といえます。
…で、この煤を「膠」という物体と混ぜ合わせて練っていきます。
「膠」は動物の皮からとったコラーゲンを含む
タンパク質の一種で、牛、馬、鹿などの動物からとれます。
この煤と膠で練り合わせる工程が墨の良否を決める重要作業です。
練れば練るほどのびのよい墨ができます。
今は機械を使って練り合わせるそうですが、
昔は手作業で全ての作業を行なっていたそうです。
墨を作るってものすごい根気と時間が要るんですね。
この工程を想うだけでも大切に使わないとな、という気持ちが生まれます。
![](https://dshirokuro.com/wp-content/uploads/2019/02/sumi3.jpg)
そうやって練り合わせた煤と膠の生地みたいなものを型に入れて乾燥させます。
ものによりますが、だいたい1ヶ月〜3ヶ月ほど乾燥させて
ようやく僕らが手にする「固形の墨」が出来上がります。
墨を買ったときによく目にする桐箱は、
外気温、湿度による影響が少なく、墨の保存に最適な保存装置です。
昔ながらの知恵ですね。
液体墨
![](https://dshirokuro.com/wp-content/uploads/2019/02/sumi2.jpg)
お次は液体墨です。
液体墨の特徴はなんといってもそのお手軽さですね。
固形の墨を磨るのに2、30分ぐらい時間がかかるのに対して
液体の墨は0秒で描き始めることが可能です。
原材料は固形の墨とそんなに違いはありませんが、
液体にするために「合成糊」を使っています。
本来混ざり合うことのない煤と水ですが、
煤の粒子を糊で包み込むことで煤と煤が凝集しないようにします。
そうやって出来上がった墨に少しずつ水を加えてペースト状にしていきます。
さらに水を加えていって「墨の液体」にしていきます。
こうして出来上がったものが僕らが手にする墨液です。
固形と液体の墨の違い
![](https://dshirokuro.com/wp-content/uploads/2019/02/sumi4.jpg)
製造過程は似たようなものですが、
液体墨の素晴らしいところは手間がかからないところにあります。
それは製造過程では使う「合成糊」に要因があるように思います。
僕は水墨画を始めた初期のころ、墨液を使っていました。
めんどくさがりの僕にとって手間をかけることが苦痛でしかなかったからです。
でもやっていくうちに、もっと繊細な表現をしたいと思うようになりました。
そうなると、墨液では少々物足りなくなってしまいました。
、というのも僕は薄墨を作るときに水に濃墨を混ぜ合わせるのですが、
墨液では水との混ざり具合が悪いように感じてしまったのです。
墨液は合成糊を使って作ります。
だからなのか、水に墨液を垂らしたときに水面で
膜を張ったように水と墨がなかなか馴染もうとしてくれません。
反対に固形墨で作った濃墨を水に垂らすとすぐに水に馴染んでくれます。
なので僕の結論としては固形墨で作った濃墨のほうが
よく水に馴染んで薄墨が作りやすい、ということになりました。
これが僕がわざわざ2、30分の時間をかけてでも固形墨で墨を磨る理由です。
墨液では水と馴染みにくいのです。
墨が自分の思い通りに作れないということは
作品を描きあげる上ではストレスにしかなりません。
それだけです。
初心者は墨液でおっけー
![](https://dshirokuro.com/wp-content/uploads/2019/02/sumi5.jpg)
長々と墨の説明をしましたが、僕が最初そうだったように
やり始めのときは墨液で全然おっけーだと思います。
、ていうかそこの違いがわからないんじゃないかなと思います。
僕はわかりませんでした。
やっていくうちにあれ?なんかちょっとやりにくいな…と、
徐々にそう感じるようになっていったので。
やり続けてもあなたが僕みたいにやりにくいと
感じるかどうかなんてわからないですからね。
固形墨を磨るのにはたっぷり時間をかけてやるほうが
良い墨ができるのでここの作業は手を抜くことはできません。
なのではっきりいってめんどくさいです。
でもそのほうがより良い作品ができるので僕はそうしてるだけです。
ほかの人に任せれるのならそうしたいですが、
それもまたほかの人にやってもらった墨で絵を描くのも
気持ち的にイヤなので自分でやります。
こればっかりはもうどうしようもないですね。笑
最終的には何でも良い
いろいろと語ってきましたが、最終的には墨なんてなんでもいいと思います。
ここまで言っといてなんですが。笑
墨を使わなければ良い作品ができないとは限りません。
僕はそれが好きだから使っているだけです。
墨を磨ってるときのあの匂いとかね。
僕は最初は墨を使わずにそのへんにあった
青いインクで水墨画風に描いたということもあります。
![](https://dshirokuro.com/wp-content/uploads/2018/05/sb17.jpg)
いちおう水墨画っぽくなってるでしょ?笑
こんな時代もありました。
でも墨を使うのって気持ちいいんです。
墨を作る職人さんの話とかを聞いたりすると墨に対して愛着も湧きます。
僕の作品が世に出ればその墨も世に出ることになります。
そうやっていろんな水墨画に携わる人たちが世に出れば
水墨画というものの価値も上がります。
そんなふうになればいいなと思ってます。
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