【リアルな人物画を描くコツ】不気味の谷をどう乗り越えるかがカギ

こんにちは。水墨画家のDと申します。

今回は「リアルな人物画を描くコツ」というお話です。

 

人物画ってめちゃくちゃ難しいのです。

人物画で難しいのはなんと言っても顔。特に写実画みたいなリアルな人物画とかになると「不気味の谷」という魔の海域があって、どうしても不気味な絵に仕上がってしまいます。

不気味の谷

リアルな人物画を描くには、不気味の谷をいかに乗り越えるか?がポイントになります。

リアルな人物画を描けるようになったら、イラストの人物画、デフォルメされた人物画なんかは楽勝で描けるようになります。

 

 

表情から気持ちを読み取る

 

まず。描く前にやるべき大切なことがひとつあります。

それは「モデルさんの感情を読み取ること」。

これはリアルな人をモデルにするのがいちばんイイのですが、無理な場合は写真でじゅうぶんです。

むしろ写真の方が表情がピタッと止まってくれてるので練習をするには写真の方がいいかなと思います。

 

人物画で、いちばん大事なのは「表情」です。

リアルな人物画が難しいのは、表情が出しにくいっていうのがひとつ、理由としてあります。

あと、表情が無機質なものになってしまうと、不気味の谷に限りなく近づいてしまうので、まずいちばんこだわるところは表情をいかに出すか?です。

そのためにはまず、モデルの顔をみて、どんな感情なのか、を読み取ることがすごく大切です。

人間の感情ってすごく複雑で、喜怒哀楽っていうシンプルな感情なんてほとんどなくて、「喜」よりの「怒」とか、「哀」の中に少しだけ「楽」が混じってるとか、何かしらいろんな感情が混ざってるのが人間です。

 

まずはそれを読み取ることが大切です。

コツはモデルさんに憑依すること。

それが当たってても当たってなくてもいいので、

顔だけじゃなくて全体をみて、全身のポーズ、背景なんかからどんな感情なのか、想像をできる限り膨らますのです。

 

これはもう想像力を鍛えるしかないので、頑張りましょう。泣

 

リアルな人物画が難しい理由

 

感情を読み取ることができましたらば。

今度はそれを紙の上に表現していくわけですが。

リアルな人物画はホントに表情を表現するのが難しくてですね。

これがデフォルメされた人物画ならまだ表情って出しやすいんです。

理由はクッキリした輪郭線を描けるからです。

たとえばニコッて笑った口を描く時って、アルファベットのUの字をちょっと平べったくしたような形を描けばそれでもう表情ってけっこう出ますよね。

楽しそうな表情だったらアルファベットのDを横にしたような、ドラえもんの四次元ポケットやつを描けばそれだけでなんか笑ってる感じが出ます。

これはクッキリした輪郭線だけでじゅうぶん表現できてしまうからなんです。

他のパーツも同じように、デフォルメされたパーツだと表情が出しやすいんです。

だからマンガのキャラクターってデフォルメされたものが多いんですね。

でもそれがリアルな人物画の場合。

クッキリした輪郭線を描こうとすると不気味の谷に突入してしまいます。

 

なのでクッキリした輪郭線を描かないで表情を出すしかありません。

その手順を解説します。

 

リアルな人物画を描く手順

 

人の顔は大きく分けると目、眉毛、鼻、口、輪郭、耳、髪の毛って感じでパーツが分かれています。

ここで大切なのは、それぞれのパーツの位置関係のバランスです。

これが少しでも狂ってしまうと、途端に別人の顔になったり、表情が変わったり、最悪不気味の谷に突入してしまいます。

そうならないようにするためには、それぞれのパーツをどういう順番で描いていくかが大事です。

いろいろ試した結果、輪郭→髪の毛→鼻→口→目→眉毛、っていう順番で描くとバランスが保ちやすくて描きやすいことがわかりました。

不気味の谷を乗り越える第一のポイントは各パーツのバランスをしっかり整えることです。

 

リアルな人物画を描く手順①輪郭と髪の毛で雰囲気を作る

 

まず輪郭を描いてその上に髪の毛を描いて顔全体の雰囲気を作ります。

この時、輪郭をバッチリ決めてしまうのではなく、薄く輪郭を描いて、髪の毛も薄く描いて、輪郭の線を重ねて、髪の毛の線も重ねて、といった感じで、位置関係のバランスを取りながら少しずつ濃くしていくといいと思います。

髪の毛はとりあえず今の段階では、そんなに描き込まなくて大丈夫です。

もしモデルさんに髪の毛がない場合は、頭の形を的確にとらえればおっけーです。

 

この時点でモデルさんの雰囲気が出ていれば大成功です。

早く続きを描きたい!というモチベーションにもなるので、心してかかってください。

先に輪郭を描いておくと、各パーツのバランスがとりやすくなるし、画面全体のバランスもとりやすくなります。

 

これをたとえば目とか鼻とかから描き始めてあとから輪郭を描くってなると画面全体のバランスが崩れてしまったり、目とか鼻をもう1回描き直しとかになってしまいます。

せっかく頑張って描いたものが水の泡になってしまうので、輪郭から描くことをオススメします。

 

これは体も一緒に描く時も、同じく顔の輪郭から描く方がいいと思います。

人がパッと見た時にいちばん最初に目に入ってくるのって顔で、その後に体と全体を見るので、まずは顔の位置をしっかり決めるっていう意味でも、顔の輪郭から描き始めるのがいいと思います。

 

■髪の毛を描くコツ

 

髪の毛を描くコツはできるだけランダムに描くことです。ひとつの場所だけをまとめて描こうとすると規則正しくなってしまって不自然な仕上がりになってしまうので、あっちいったりこっちいったりしながら描くと自然な仕上がりになりやすいです。

あと。いっぺんに描き込むのではなく、鼻を描きながら髪の毛も少し描いて、鼻が出来たら口を描きながら髪の毛も少し描いて、というふうに少しずつ描きこんでいくと、より自然な感じに仕上がります。

髪の毛のツヤツヤ感は、白く光るところを先に決めておくと、描きやすくてツヤ感が出やすいです。

 

リアルな人物画を描く手順②鼻を描く

 

輪郭ができたら次に鼻を描いていきます。

鼻は顔の真ん中にあって、先に鼻を描いておくと後のパーツのバランスが取りやすくなるので、鼻をいちばん最初に描きます。

で。この鼻なのですが、簡単そうに見えて実は意外とクセモノです。

 

たとえば画像の赤マルとか青マルの部分から描こうとすると、「不気味の谷」に突入してしまってそれはそれは気持ちの悪い顔が出来上がってしまいます。

もはやトラウマレベル

不気味の谷を乗り越える第二のポイントは鼻をどう自然に描くか?です。

鼻は↑の青い○のところから描き始めるとうまくいきます。

こちらの動画で詳しく解説してるのでごらんくださいませ。

 

リアルな人物画を描く手順③口を描く

 

鼻の次は口を描きます。

口も鼻と同じように青い線の部分、唇の輪郭を濃い線で描いてしまうと「不気味の谷」に突入してしまいます。

不気味の谷を乗り越える第三のポイントは口を自然な仕上がりにできるかどうか、です。

 

口ではっきり濃い線を描いていいのは↓の赤線の部分だけです。

それでもあまり濃くしすぎるとそれはそれで気持ち悪くなってしまうのでほどほどに。

そしてなんといっても難しいのが唇をどう表現するか、です。

丸みを帯びててシワが無数にあって、なおかつイイ感じにテカらさないといけない…。

こんなややこしいものはほかにありません。

これは薄い線を少しずつ重ねて表現するしかないのですが、詳しくは動画で解説してるのでごらんくださいませ。

 

あと、口は表情を表現する上でいちばん大事なパーツです。

口が無機質なものになると、顔全体が無機質なものになってしまうので、モデルの感情に憑依してミリ単位で調節しながら、表情が出るまでは何回も何回もやり直さないといけないかもしれません。

かなりエネルギーの消費が激しくて、途中で心折れるかもしれませんががんばってください。

うまくいけば口と鼻だけでも雰囲気が出てモデルさんだとわかるぐらいのイイ感じの顔になっております。

 

ちなみに僕は何回も心折れました。

でも自分で描いたモノに感動したくて、気がつけばエンピツ握っていました。

 

リアルな人物画を描く手順④目を描く

 

目は最後に描きます。

この時点である程度雰囲気が出てたら目を描くのがワクワクしてくるハズ。

 

目も口と同じぐらい表情が出るパーツです。

「目は口ほどに物を言う」なんて言葉があるぐらいですから。。。

 

目が難しいのは球体で奥行きがあってまつ毛がたくさんあるからです。

特に眼球の光が当たってるところ(ハイライトとか呼んだりします)の表現は生命線と言ってもいいぐらいです。

これがあるとないでは表情が全然変わります。

あと、目はふたつあるので、距離感がすごく大事です。ここが1ミリでもズレると表情が全然変わってくるし、ヘタすると不気味の谷に突入してしまいます。

不気味の谷を乗り越える第四のポイントは目と目の距離感です。

ここも何回も何回も描いては消してを繰り返すことになるかもしれないので、かなりエネルギーを消耗しますが、頑張ってください。

眉毛はひと通り描き終わってから描いた方がバランスが取りやすいのと、他のものに比べると無機質なのでめちゃくちゃ描くのが楽チンです。

これも動画で解説してるのでよろしければごらんくださいませ。

 

リアルな人物画を描く手順⑤肌の質感を出す

 

ここまできたらあともうひと息です。

リアルな人物画にするための締めくくりが肌の質感を出すことです。

他のパーツの動画で何回か解説していますが、クッキリした線を描くのではなく、エンピツを柔らかく持って紙をなでるように優しく塗っていきます。そうすると、線ではなくぼかした感じになって肌の質感が出ます。

この時、エンピツは先が尖っていると肌の質感は出しにくいので、先の丸くなったエンピツでやるとイイ感じに質感が出しやすいです。

あと。カゲの濃いところはとことん濃く表現した方が立体感が出て素晴らしい仕上がりになります。

 

補足:肌を描くときの裏技

エンピツの線をぼかしたい時に使う必殺アイテムがあります。

これを使えばわりと楽チンにエンピツの線をぼかすことができるので、よろしければ使ってみてください。

 

表情を意識しながら描く

 

描く前にも言いましたが、大切なことなのでもう一度。

人物画のいちばんのキモは「表情」です。

顔は心を映す鏡なんていう言葉があるぐらい、その人の感情がいちばん表に出てくるところです。

 

それを紙の上に、しかもリアルに表現することはかなりハードルが高くて、かなりエネルギーを消耗します。

その代わり上手くできた時は、なかなか言葉では表せないぐらいの達成感があります。

 

そのためにヒーコラヒーコラ頑張るのですが、描く人がそのモデルさんと同じ感情になってた方が表情が出やすいのです。

これは芸術のマジックみたいなもので、数値とかでは決して表せないものなので、うまく説明することはできませんが、そういうことは何回も経験してるので何かしらあるんです。

 

そのためにはモデルさんの表情をよーく観察して、感情を読み取って、自分もその感情になることがすごく大事です。

 

知らない人を描く場合

 

絵を描く仕事をしていると全然知らない人の顔を描くこともあります。

例えば上の絵は僕が描いた水墨画の人物画なのですが、おじいちゃんと孫のツーショットです。

 

おじいちゃんがすでに他界されてて、写真は見るのがツラいから…と、ご依頼をいただきました。

出来上がったものを渡して、見た瞬間に涙を流して喜んでくれたので、いい仕事ができたな、と胸を撫で下ろすことができました。

 

僕はこのお孫さんの方は面識はあるのですが、おじいちゃんの方はまったく面識がありませんでした。

でも僕にもおじいちゃんはいたので、その時の記憶をできる限りたぐりよせて、このおじいちゃんが僕のおじいちゃんだと仮定して想像を最大限膨らませながら描きました。

 

そうすると、いろいろ思い出して胸のあたりがホカホカして、描きながら何回も涙がこぼれそうになりました。

 

その結果、すごく喜んでもらえるいい絵を描くことができました。

 

これはあくまで僕の場合ですが、こんな感じでモデルさんの気持ちになって描くことがすごく大切なことです。

 

まとめ

 

以上「リアルな人物画を描くコツ」をお送りしてまいりました。

 

人物画はホントに難しくて、「不気味の谷」を乗り越えるには何回も何回も心が折れるかと思いますが、乗り越えた時はホントに何物にも代えがたい喜びと達成感があります。

 

もう、頑張ってくださいとしか言えませんが、ステキな人物画を描けることをお祈りしております。

 

それではまた〜。

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください