水墨画の紙:和紙を使わないとだめなの?

 

水墨画=和紙?

そんなイメージを持っていませんか?

これはネットとかで調べてみてもたいした情報はなくて、あっても水墨画は和紙です!って言いきってるようなものが多いみたいです。

結論から申し上げますと「和紙に描かないとダメ」は大ウソです。

描けるものだったらそれが和紙であろうがコピー用紙であろうが、はたまた布であろうが、水を吸収してくれるものだったら水墨画は描けます。

水墨画=和紙のイメージがついたのにはどうやら歴史が大きく絡んでいるようです。

 

長い歴史が生んだもの

 

日本にいろんな文化が入ってくるようになったのは明治以降です。

それまでの日本での筆記具といえば筆と墨と和紙でした。墨と筆で和紙に字を書いたり絵を描くことが始まったのは7世紀ぐらいのこと。時代劇とかでもよく墨と和紙で手紙を書いたりしていますね。

和紙は吸収が良くて、墨との相性がすこぶる良かったんですね。なので和紙にはいろんな種類があります。

そこから1000年以上もの長い間、日本は島国という環境も相まって独自の文化を築いていきます。

そんな鎖国国家でほかの文化がほぼ入ってこない状況なので「和紙以外の紙がなかった」んですね。

んでもって長い長い鎖国が開けたのは幕末、1800年代後半のこと。

それから一気にいろんな西洋の文化が日本に入ってきて、筆記具も筆と墨から鉛筆とかペンのような使いやすいものになっていきました。

それは筆と墨よりも圧倒的に使いやすかったので当時の日本人の皆さんはこぞってそっちに流れていきました。

当たり前だったものが一気に淘汰されてしまったとはいえ、長い時間をかけて染みついたものはなかなか消えるものではなく、水墨画=和紙というイメージはそのまま残ってしまいました。

なんでそこだけ残ったのかは謎です。。。

この事実を誤って解釈した人たちが水墨画は和紙に描かないとダメだー!と騒ぎ立ててしまったもんですから、僕を含めたいろんな人たちに「水墨画って和紙に描かないとダメなんだ」という印象を植え付けてしまいました。

 

芸術は自由です

 

水墨画は墨と水を使って絵を描く芸術です。

芸術の根底にあるのは「自由な表現」です。「これはダメ」っていう規制をかけると表現の幅を狭めてしまって、面白くもクソもなくなってしまいます。

昨今の地上波のテレビ番組がまさにそんな感じです。

なので水墨画を和紙に描くのもステキなことだし、西洋紙に描くのもステキなことです。

どっちのほうがいいとかはなくて、描きやすさとか表現したい作品によっていろいろ変えたらいいと思います。

 

 

オススメの紙

 

ホームセンターとか画材屋さんで売ってるcampusのスケッチブックがわりと近い感覚で絵を描くことができます。

これはお手頃な価値価格で手に入るので僕は最初、これを使って絵を描いていました。

コットマンというメーカーの紙もすごく描きやすいです。先ほどのアルシュに近い感じの紙です。これも値段は比較的お安くなっております。

目の細かさでいうとダントツでケント紙がすごいです。(さよなら語彙力)

これは目がすごく細かくて繊細な表現がしやすいです。厚みが少しばかり足りなくて頼りないのが残念なところ。

水を含むとすぐに波打ってしまって絵を描くどころではありません。でもエンピツで描くぶんには何もデメリットはないのでラフスケッチとか描くときに重宝しています。

 

僕が今現在使っている紙は「アルシュ」というフランス製の水彩紙です。水彩画用の画用紙です。

500年もの歴史を誇るスゴイやつです。

この紙がいちばん厚みがあってかつ、目が細かくて僕の表現したいこととバッチリ合ったのでこれを使っています。滲み具合もぼかし具合も水の吸いかたもすごく秀逸で僕の好みです。

ただ、少しお値段が張ります。

紙の歴史

 

調べていると紙の歴史までたどり着いてすごく興味深かったのでぜひ共有しておきたいと思いました。

紙の語源は「パピルス」です。英語の「paper(ペーパー)」やフランス語の「papier(パピエ)」は共に「紙」で、パピルス(papyrus)が由来になっています。面白いですね。

パピルスって何だ?ですが、パピルスはザックリ説明すると、紀元前3000年ぐらい大昔の紙の材料で、水草の一種です。厳密にはこのパピルスは「紙」ではなくどちらかというと「布」に近いです。

本格的な「紙」が発明されたのは紀元前2世紀ごろの中国でのことです。当時はいろんな方法で試行錯誤しながら紙が作られていました。

蔡倫(さいりん)というエライ役人さんが今の紙に近い実用的な紙を作りました。紙の材料には麻のボロきれとか樹皮を使っていたそうな。このころの役人さんは本当の意味でエライ人だったんですね。今の日本の役人も見習ってほしい。

 

そこから約1000年の時が流れて日本に伝わってきたのが7世紀、610年ごろ。

高句麗の僧、曇徴(どんちょう)が墨とともに日本に製紙法を伝えたと言われています。

当初は麻を材料に紙を作っていて、独自の改良を加えて楮(こうぞ)とか雁皮(がんぴ)を材料として使うようになって、日本オリジナルの「和紙」として発展していくことになります。日本人の得意技です。

 

まとめ

 

紙は水墨画ではすごく大切な道具のひとつです。重要視すべきは「描きやすさ」で、それによって気持ちよく筆が進んだり進まなかったりします。それは作品にもすごく影響します。

僕のような水墨画の表現をするのであれば上の3種類がオススメです。あくまでも僕の個人的な好みなので絶対にこれがいいというわけではありません。人それぞれ感じるところは違うし、表現したいことも異なると思います。なので、自分なりに考えて自分に合ったものを選ぶのがいちばんいいと思います。

 

 

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