絵は描くだけが練習じゃないのです。描かないと上手くなれないのは間違いないのです。それこそたぶん何千枚とか何万枚とか描かないと上達はしないと思います。人間ってどうやらある程度の技術を得ようと思ったら「積み重ねること」でしか得られないのです。絵の場合は数がすごくウエイトを占めていてやればやるだけ上手くなっていきます。
でもこれを勘違いして何枚描けば上手くなれますか?とか何日やれば上手くなれますか?といった質問をする人がけっこう多くてですね。その答えは「上手くなるまで」です。人それぞれ上手くなるまでの距離は全然違います。100枚描いて上手くなる人もいれば1万枚描かないと上手くなれない人もいるでしょう。
・・・っていうのが一般論なのですが、描かなくても上手くなるというミラクルなできごとを僕は体験したのでこんな方法もあるよ~というのをおすそわけします。
僕は小さいころから絵を描くのがすごく好きでヒマと白い紙さえあれば絵を描いていた子どもでした。そのときに描いてたのはドラゴンボールがメインです。あとドラえもんとか。とにかく絵を描くことが大好きだったので毎日毎日描いていました。飽きることなく。
描いた絵をまわりの友達とか親とかにみせると「うまっ!!」とほめてくれます。調子にのった僕はさらに絵を描くことが好きになります。そうやって絵が好きになった僕は小学校6年生のときに漫画家になりたいなと思って30ページぐらいの漫画を描いて雑誌に投稿してみました。
でも結果は残念ながら鳴かず飛ばず。編集部からの連絡はありませんでした。少年Dの心はその瞬間にポキっとおれてしまいました。
絵を描くことをすっかりやめてしまいます。
ときは流れ、あるできごとがきっかけで「久しぶりに絵でも描いてみよう」という気になりました。するとどうでしょう。最後に描いた小学6年のときより明らかに腕が上がっているではありませんか。あまりの上手さに目を疑いました。漫画みたいに目をこすって何回も見直しました。
このときはあまりにもびっくりしたので特に気にはしていませんでしたがよくよく考えるとすごく不思議なできごとです。
絵は描かないと上手くなれないと豪語してるのになぜか自分は描かなかったのに上手くなってる。
なぜこんなことが起きたのか?
そこには芸術の不思議なマジックがありました。
僕は12歳ぐらいを最後に絵を描くのをやめました。そして17歳のときにドラムを始めます。そして音楽にのめり込みます。音楽で食べていく決意をします。
そこでプロになるためには何が必要か?をめちゃくちゃ考えました。それには人の魂を揺さぶるほどの圧倒的なクオリティの作品を作ることだという結論に達しました。僕自身も魂が揺さぶられて起こした行動がいくつもあるからです。それは今でも変わっていない、普遍的なものです。
そんなふうに考えることで「芸術的な感覚」を磨く練習をしました。それをたぶん8年とかそれぐらいはやったんだと思います。
この「感覚を磨く」っていうことと、小さいころにたくさん絵を描いて身につけた「画力」とが合わさって久しぶりに描いたのに自分でビックリするぐらいの絵が描けたんだと思います。
今考えるとそのときの絵(めちゃくちゃ見せたいのに残ってないから見せれない泣)って技術的には12歳のときとそんなに変わってないと思います。でもそこに新たに磨きに磨きをかけた「芸術的な感覚」が上乗せされた。だから自分でもビックリするぐらいの絵が描けた。
たぶんこれが正しいと思います。
これが芸術のマジックです。上手いとか下手とかじゃなくてそれ以上の「ナニカ」、目に見えないチカラが働いてる。これは可視化できないし数値化することもできないものです。教えようと思っても人それぞれ感覚が違うから「ここはこうだからこうしたらいいよ」みたいなことって言えないんです。
ただひとつだけ言えるとしたら、魂が揺さぶられるような、全身に衝撃が走って鳥肌がとまらないような、言葉にできないような圧倒的なものだということです。
これが描く以外の絵の練習方法です。
僕はこれを分けてやりましたが、それってたぶんすごく効率が悪いのであまりおススメできません。僕自身もかなり不本意だったので。
いちばんいいのは描く練習もしつつ感覚も磨くっていうのがいちばん効率がいいかなと。
それを見事にクリアできるのが「模写」です。
この記事でも語っているのですが、線を見たとたんに線だけの絵になってしまいます。そうじゃなくてその絵、写真から感じ取れる「雰囲気」とか「空気感」がすごく大事なことで、それを感じながら模写をするとべらぼーに上手くなれます。
描かなくても雰囲気とか空気感を感じ取るだけで上手くないけど「いい絵」は描けるようになります。それには自分が心の底から「うおっ!これめっちゃいい!」って思えるような絵とか写真を自分で探す必要アリです。これすごく大事なことです。
絵は描くだけじゃなくて感じることもすごく大事なことです。